「年内に150円の可能性も」 24年ぶりの円安、経済アナリストらの見解

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急速に円安が進行している。9月7日の夜に、一時1ドル145円に迫るなど、約24年ぶりの水準となっている。引き続き、金利差拡大が意識され、市場では1ドル=150円まで円安が進むとの声も強い。

円安はどこまで進むのか? 経済アナリストなど有識者4人に聞いた。


経済アナリスト・馬渕磨理子氏 


年内に150円までいく可能性がある。米欧との金利差は大きく、日本が対策を練らない限り円安は続くだろう。

円安が加速した理由は、米国の経済指標が好調だからだ。雇用統計は予想を上回る結果となり、失業率も3.7%と低い水準で保たれている。さらに、9月6日発表の非製造業ISMは56.9に上昇し、景況感の分かれ目の50をしっかりと上回った。米国経済の強さが伺える内容で、利上げ継続が見込まれる。

さらに、オーストラリアなど米国以外の利上げも相次ぎ、相対的に円の価値が下がる傾向が強まりそうだ。

ソニーフィナンシャルグループ 執行役員兼金融市場調査部長・尾河眞樹氏


ドル円は24年ぶりの144円台を付けた。コロナ禍が背景となり、

1. 強力な金融緩和と巨額の経済対策による米国経済の過熱、サプライチェーンの混乱による供給懸念、ウクライナ危機による資源高などで米国のインフレが加速し、米金融引き締めとともにドル高が進行
2. 日本の経常収支が悪化したうえ、先進国で日銀のみが金融緩和策を維持したことで円安が進行

これらがドル円の上昇に繋がっている。8月26日のジャクソンホール・シンポジウムで米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、景気を犠牲にしてもインフレを抑制する姿勢を明示し「利上げを継続しその後金利を据え置く」との方針を示した。

これが市場でサプライズとなっている。今なお早期利下げを期待する市場参加者にFRBのタカ派的な政策意図が浸透すれば、目先、もう一段のドル円上昇はあり得る。一時的には1998年の147円台を試す可能性も否定できない。ただし、来年には利上げ効果で米景気が減速し、インフレは沈静化する見込みだ。

来年秋以降、FRBの利下げ、また日銀の政策修正等があれば、これも円を支えドル円の上昇トレンドは下落方向に反転する公算が大きい。
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