「連続殺人」シャチが再びサメを襲いはじめる

Getty Images

普段は青黒いその瞳に命の気配はなく、ピチャピチャと洗う波が、瞳の持ち主の体をゆっくりと揺らしている。恐れられる捕食者であることが多いのホホジロザメは、さらに恐ろしい敵に襲われた傷に倒れた。その敵とはシャチだ。

このホホジロザメ(Carcharodon carcharias)とシャチ(Orcinus orca)との戦いは、南アフリカ沖の海でここ数年続いている。2017年2月から7月の間に、5体のホホジロザメの死骸が西ケープ州ガンズバイの海岸に打ち上げられた。African Journal of Marine Scienceに掲載された最新論文は、2017年以来同じ地域で同じ2頭のシャチが8頭のホホジロザメを殺したと推論している。サメの内蔵(主として肝臓だが心臓を奪われたサメもいる)を標的とする白黒模様の捕食者は、必ず名刺を残していく。サメの胸の中央に空けられた大きくてきれいな穴だ。「非常に正確な傷です」とマカンダのローズ大学のサメ生物学者アリソン・タウナーが9news.com.auに話した。「2頭のシャチが協力してサメを引き裂いています」

一連の殺害の原因であるこれらのシャチは、サメを食べる稀な形態であると考えられている。ポート(Port)とスターボード(Starboard)と名づけられたこの成体のオスのシャチ2頭は、エネルギー豊富なサメ肝臓を堪能することで知られている。最近まで、科学者は海の両巨人が戦った血みどろの残骸を見ることしかできなかった。しかし、Discovery Channelの今年の「Shark Week」のドローン映像は、モッセル・ベイでシャチの群れが高度に組織化された攻撃でホホジロザメを襲っているところを捕らえた。世界中で放映されたその映像には、シャチの1頭がサメの腹を引き裂き肝臓を取り出して食べているところが映し出されていた。

しかしこの最近の殺戮はどうだろう? これは新しい場所でのことだ。タウナーはメスののサメ(亜成体)が殺された直後の写真を共有した。モッセル・ベイのハルテンボスで見つかったその死骸(この地域でシャチに殺された最初のホホジロザメ)は、写真撮影と測定が終わった後、海に戻された。「今シャチたちはこの場所に重点をおいているようです」と彼女は述べ、この殺害が同じ2頭のシャチによるものだと信じていることを付け加えた。「この傷口は他の殺されたサメのものと同じです」

シャチがなぜ狩猟範囲を変えたのかはわかっていないが、タウナーと他の地元の科学者らは、今後別の死骸が打ち上げられるのかどうか、またこの地域のサメにとってこれが何を意味するのかの解明に意欲を見せている。現時点では、彼らにとって答えよりも問題のほうが多いようだ。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事