その中においてグッチは、2015年にアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、ダイバーシティ、ジェンダーの公平性、サステナビリティといった社会課題にファッションの切り口からアプローチし、変化を先導してきた。
コロナ禍以降も、ファッションのシーズンにとらわれないコレクションを発表したり、ヴィンテージやセカンドハンドのグッチ製品に修繕を加えることで新しい価値を生み出したりと、迅速、かつアーティスティックな動きで注目を集めている。
ミケーレを起用し、グッチに経済的・文化的な成功をもたらしているマルコ・ビッザーリ社長兼CEOが来日したタイミングで、一周年を迎えた東京・銀座の旗艦店「グッチ並木」で話を聞いた。
──ほぼ3年ぶりの来日ですね。
コロナ明けの初のアジア訪問です。アジア諸国のなかでは日本が最初の訪問国になります。日本がいかにホスピタリティにあふれ、あたたかい対応をしてくれるのかということを忘れかけていましたが、あらためて感動しています。コロナ前から一貫して変わらない日本の美点ですね。
グッチ並木の1周年を祝して、グッチを象徴するバンブーをテーマに四代田辺竹雲斎氏とのコラボレーションを展開(8月31日まで公開予定) Courtesy of Gucci
──それはよかったです。グローバルに展開するグッチにとって、日本はどのような位置づけにありますか?
日本はアジアのなかでもっとも早く進出した国です。1972年にグッチの直営店を開きました。ラグジュアリーブランドの進出という意味では、黎明期です。日本はグッチにとって大切な国で、常に関心を持って注目してきました。
──世界から見た日本の独自性、特殊性があるとしたらどのようなところですか?
日本のお客様が求めている方向は、2つあります。まずは、高品質で伝統のある製品のラインナップ。そして特に若い世代は、ファッショナブルな製品を求めています。「レガシー」と「ファッション性」という相反する需要が融合しているのが日本独特で、その独自性を重視しています。これは、まさに現在のグッチの戦略とも一致しています。
──伝統と前衛。日本らしいですね。日本市場に合わせた取り組みはどのような形でおこなっているのでしょう? 日本の独自性はどの程度保たれているのですか。
2015年にアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクターになって、最初に重視したのは、誰もが「グッチらしい」とすぐに認識できるような一貫したブランドのイメージを作るということでした。そのうえで、ローカライゼーションを進めていきました。