ビジネス

2022.06.15

グッチCEOに聞く、ラグジュアリーブランドの役割と多様性の価値

グッチのマルコ・ビッザーリ社長兼CEO(撮影=小田駿一)


──メタバース、Web3といったデジタル世界にも積極的に進出していらっしゃいますね。

はい、フィジカルな世界とデジタルな世界も一貫した世界観を作っていくことを目指しています。感情的なつながりを保ちながら、美の提案をしています。メタバースにおいては、大勢が求めるものを創造し、その中でグッチらしさを徹底して提供することができる。こうした包摂性はアレッサンドロが就任してから遵守してきた概念です。メタバースの空間は彼と性質的に相性がよく、むしろ時代がついてきたように感じています。


デジタル上の実験的コンセプトショップであるVaultで展開する最新プロジェクト「10KTF Gucci Grail」 Courtesy of Gucci

──新しい世界への進出と言えば、ラグジュアリーブランドのなかではいち早く、一部の地域で製品を暗号通貨でも購入可能という決定をされましたね。時代の変化が激しい中で、前例のない事例でもスピーディーに決断をしなくてはならないCEOという立場において、何を判断の基準とされているのでしょうか?

私が決断を下す際に、数字だけを参照するということはありません。ベースにあるのは「ブランドにとって何がベストか」という考えです。

暗号通貨に関しては、新しい世代の顧客にとってより良い体験を提供できるのであれば、新しい技術を取り入れたいと考えています。若い世代は、規則を決められ、指示されることを好みません。むしろ、自律的に決めることを望んでいるので、暗号通貨での決済の導入は、人々が私たちの製品を望む方法でご購入いただくことにオープンであるという意志表示になると判断したのです。

基本的に、私は新しいことを受け入れます。世界の変化はめまぐるしく、多くのことは、100%情報が揃わない状況で判断をしなくてはなりません。そのような不完全な状況であっても、新しい考えを拒否せず、楽観的にチャレンジを続けいく。それがグッチであり、私はグッチの姿勢を反映した働き方をしたいのです。



──今日のスーツスタイルからもそんな進取的で、チャレンジを楽しむ姿勢がうかがえます。袖口のタグは、日本の紳士業界では「着るときには取り外すのがルール」とされていると思うのですが。

その通りです。このスーツはタグを付けておくことで、他とは違うスーツになるように意図されているので、あえてつけているのです。私は人と違うのが好きなのでね。

インタビュー・文=中野香織 ポートレート=小田駿一

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