また、ミラノに住んでいると、日本からやってきた方から、「ミランのユニフォームを買いたいのですが、どこで買うのがいいですか?」と定番の質問のように聞かれます。このように、サッカーは世界中で人々の交流の大きな扉のひとつになっています。
企業によるスポーツの「活用」
それではサッカーチームのファン規模とはどのくらいなのでしょうか。マンチェスター・ユナイテッドのフェイスブックのフォロワーが7400万、インスタで約5600万(同チームに所属していたデビッド・ベッカムは7000万超え)です。ミランはフェイスブック2500万。レアル・マドリッドやバルセロナに至ると、フェイスブックとインスタ、それぞれ1億を超えます。
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音楽でも人気のビリー・アイリシュともなればインスタで1億を超えていますが、クラシック音楽の殿堂であるベルリンフィルハーモニーのフェイスブックのフォロワーが160万。比較しても、サッカーとSNSの相性は抜群と言ってよいでしょう。
このサイズに注目する多くのビジネスが入り込んできており、ハイブランドも例外ではありません。グッチやモンクレールといった企業がチームのスポンサーになり、存在感を増しつつあります。
米国のセント・ジョセフズ大学でマーケティングを教えるマイケル・サーモンは、「サッカーは労働者のスポーツと言われたが、長い年数を経て社会がスポーツを取り込んできた」とテレビ番組で語っています。アメリカンフットボールと同じ道を辿っている、と。結果、ラグジュアリーの鍵である文化遺産としても、サッカーのようなスポーツが注目されていると指摘しています。
ストリートカルチャーを採用するなどしてエリート臭さを消してきたハイブランドが、今度はサッカーをターゲットにした。そのような印象をもちます。
殊にサッカーは世界中にファンをもっています。先述の欧州各チームのフォロワーの数も、欧州地域外のファンに依存している部分が大きいとも言われています。この現象は、ますます「インクルーシブ」を強調する新しいラグジュアリーの文脈でどう読んでいけば良いでしょうか?
このテーマを考えるにあたり、ロンドン芸術大学・セントラル・セントマーティンズ修士課程でスポーツを通じたソーシャルイノベーションを研究している林鉄朗さんに意見を聞きました。