2019年、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のレポートは、世界中の起業家の平等性に関する硬直した現実を暴露した。もし起業家に男女差がなかったなら、世界経済は5兆ドル(約135兆円)成長していただろう、と同レポートは指摘した。ちなみにこの数字は、世界GDPの成長率6%に相当するものであり、新型コロナが世界GDPに与えた影響に関する世界銀行の最近の経済予測をわずかに上回っている。
BCGは別のレポートで、この増加予測の根拠は、女性が経営するスタートアップは、男性のスタートアップよりも高い実績を上げる傾向にあるからだと書いている。実際、女性起業家は支援者に対して男性起業家の約2倍のリターンを生んでいるという。
「経営陣に女性の多い企業は、経営に対する集中度が高く、満足したスタッフと健全な労働意欲による、バランスのとれたビジネスを実現しやすいことが最近証明されています」とGoldrange ResourcesのCEO、ヘレン・ルース・ペインは語る。「女性が率いる会社は、母として専門職に就く上での柔軟性と深い理解によって、スキルのある労働者の残る50%に機会を与えます。ペースが早く高収入な専門職の世界で、これまで職を得る機会の少なかった人たちです」
欧州委員会とイノベーション・融資諮問委員会と、欧州投資銀行(EIB)が最近発行したレポートでは、女性起業家がビジネスを立ち上げスケーリングするための資金調達と支援の獲得における障害の現状に光を当てている。さらにレポートは、創業者と投資家の両方に女性の存在が少ないことを、問題の要因として強調した。
善意からの支援
この状況に対してよくある改善提案は、女性が投資コミュニティでより大きな存在になれば、その女性投資家が女性起業家を支援するというものだ。しかし、フランスのビジネススクールINSEADの調査結果は、そのような提案は残念ながらスタートアップに対する平等性向上のためには、益よりも害が多い可能性があると指摘する。
事実、女性ベンチャーキャピタルの支援を受けた女性のスタートアップは、男性投資家の支援を受けたスタートアップと比べて、追加資金を得られる可能性が半分であることを調査は示している。これは、女性による企業の格差問題は、女性投資家が増えることで解決するという主張に真っ向から対立する。