「こうした結果の理由は、女性投資家が若いスタートアップを見つけたり支援したりすることに長けていないからではありません。事実、男性が設立したスタートアップに関して投資家の性別による違いはありません。しかし、女性創業者の場合、女性から支援を受けることが、他の投資家が彼女たちを見る目に影響を与えています」と研究者は説明する。
「私たちはいくつかの実験を行い、男性起業家と女性起業家によるプレゼンを、実験参加者たちに評価してもらったところ、女性投資家から支援を受けた女性起業家の方が能力が低いと感じ、ビジネスアイデアも期待できないと答えました」
成功の邪魔になる恐れ
結果的に、善意によるものであっても、女性が女性に投資する機会を増やすことは、女性投資家に重荷を背負わせるだけでなく、女性起業家の長期的成功を損なう可能性すらあるようだ。
「興味深いことに、男性投資家と女性投資家の両方から出資を受けた女性創業者は、非常にうまくいっているようです。このことは、女性投資家と女性起業家を引き合わせることは、非生産的かもしれないとを示しています。むしろ、ベンチャーキャピタルや投資先のスタートアップは、多様な投資チームを作ることによって、より多くの恩恵を受けられるかもしれません」と研究者らは説明した。
これは、少々考えさせられる問題だ。実は、昨年欧州の女性投資家25人からなるグループが、女性主導のベンチャーキャピタルに特化した30億ユーロ(約4182億円)のファンド・オブ・ファンドの設立を呼びかけ、女性の意志を反映し、女性率いるスタートアップの支援を目的として掲げたのだ。
European Women in Venture Capital Group(欧州女性VCグループ)によるこの提案は、女性起業家が資金調達で直面している現在進行中の課題に取り組むべく考えられたものだ。提案はイノベーション・研究・文化・教育・青少年担当欧州委員のマリヤ・ガブリエルに温かく迎えられ、「投資家レベルの多様性を高めることは、投資先企業の多様性を高めることにつながります」と同氏は述べた。
しかし、もしINSEADの調査結果が正しいとすれば、ガブリエルの仮定は再考される必要がある。投資における性差別を減らし、女性起業家が必要とする支援を確実に受けられるようにするためには、別のアプローチを検証しなければならないだろう。