さて、崎陽軒社長はシウマイ弁当をこう食べる
──それではいよいよ、社長にシウマイ弁当を実際に食べていただきます。よろしくお願いします。
これ、意識したことがないっていうか、緊張しますね。
まず、私はお弁当は横向きです。
──おお! シウマイ弁当を「横向き」に、しかもご飯を右に置いて食べる人は統計的にもなかなかレアです(注:『食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編』中のアンケートによれば、回答者623人中、縦置きご飯手前:386人、横置きご飯左:131人、横置きご飯右:104人)。ご飯が右な理由は?
横向きでも、普通はご飯を左に置きますよね。理由は...工場のお弁当のラインってこの向きで流れるんです。その様子が脳に刷り込まれているせいかもしれませんね。
──売店では縦向きで売っているので、縦が正解だと思いこんでいました。その発想はなかったです。
私は3カ月間、弁当工場で研修をしていて、最初の1カ月間ご飯を炊き続けました。なにしろ、「おいしいお弁当はご飯がおいしい」「お弁当はご飯がおいしくなければいけない」という日本人の真実がありますよね。
僕の食べ方は、まずは左下の俵型ご飯を半分くらい。お店で定食を注文して、ご飯から食べることはまずないので、これも、自社製品に向き合うと、「弁当はご飯が命」というマントラが脳内に聞こえ出す、という職業病ですかね。
シウマイは最初はなにもつけず一口で。何もつけずに満足いただけるレシピになっています。そして残り半分のご飯をいただきます。ここからが大変なんですよね。私は、パターンが決まっていない。あっちへ行ったりこっちに来たりするタイプですね。
──今日のご気分のパターンでまったく問題ありません。
ありがとうございます。次は鮪の漬け焼ですかね。大物のおかずを。ご飯を口に含むタイミングは、口内の味が「濃く」なった時ですね。そして、この俵型ご飯を一口で食べることは少ないです。
──それはなぜでしょう? ちなみに僕は「一口でパクリ」派なのですが。
おかずひと口に俵一個だと、あとからご飯が足りなくなって、お惣菜だけが残りませんか?
──なるほど。バランスですね。おお、そしてここで「梅ずらし」ですね!ここは3代目(野並直文現会長)もずらしますもんね(「梅ずらし」とは、シウマイ弁当の8個の俵型ご飯の真ん中に乗っている小梅をご飯からはずすこと。はずした後の、ほんのり小梅の味のついたご飯を食べるのが好みなケースもある)。
私は3代目のように、ここを集中して食べはしないですけどね(笑)。そして私は「味変」を楽しみたいタイプなので、2個目のシウマイはしょうゆだけでいきます。ちなみに、しょうゆは周りのおかずに流れてしまうのが嫌なので、その都度つける主義です。
──そして筍煮で箸の往来のリズムを細かく刻んで整える、そんなパターンですね。
はい、筍煮でリズムも口内の塩加減も整えられます。筍煮はいいですよね。数もありますし。