コロナ後の観光 アナログなDX事業「ぎふ旅コイン」に期待

先日、岐阜県の下呂市、そして兵庫県の淡路島、神戸と、立て続けに出張する機会があった。そんななか、下呂のホテルは満員御礼、淡路島や神戸もかなりの賑わいが戻っており、夏休みを迎えて、第7波のコロナ禍を迎えつつも、人々は驚くほど自由に動いていることを実感した。

新幹線でも、さすがにまだ3人並びの席がすべて埋まるということは無いものの、1車両に私1人しか乗客がいなかった頃と比べると雲泥の差だ。何より乗客の顔が明るい。

もちろん、みなマスクはつけているし、車内アナウンスも相変わらずマスク着用を促し、「車内の換気を行っています」「大声でのおしゃべりを控えてください」「座席の回転はさせないで」などお決まりのフレーズが常時、流れているが、以前のような乗客同士の間のピリピリとした緊張感は随分少なくなったような気がする。

断念せざるを得なかった「Go TO」


なかでもいちばんの大きな違いは、小振りのスーツケースを転がしながら明らかに観光目的だとわかる、2人から3、4人の家族や小グループの楽しそうな姿が多く見られるようになったことだ。そして、それらの観光客の何割かは、居住地の近場で利用できる「県民割」と呼ばれる旅行割引を活用しているという。

その県民割だが、現在は居住県だけでなく地域ブロックとして国が指定した都道府県間での利用が認められている「ブロック割」と併記するのが正しいとされている。例えば東京都民であれば、関東ブロックとして東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城、山梨の1都7県での利用が可能というわけだ。私の住んでいる岐阜県は東海ブロックで、岐阜、新潟、富山、石川、福井、長野、静岡、愛知、三重、滋賀が対象となる。

ちなみに近畿ブロックに属している滋賀県は、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、福井、岐阜、三重、京都が対象で、三重県は三重、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜、静岡、愛知、奈良、滋賀、京都、和歌山と言った具合で、近畿ブロックは割引対象県域が他県より広かったり、京都などの観光地が含まれていたりで、少なからず不公平感を持つ人もいるらしい。

実は政府(観光庁)は、数カ月前の6月頃までは、この県民割を2020年に行われた「Go To トラベル」のように、夏には全国に割引先を拡大しようという予定だった。しかし第7波の到来で、断念せざるを得なくなったのだ。

ここでもう一度、過去にコロナ禍対策として政府が実施してきた観光施策を簡単に振り返ってみよう。その最も代表的な事例が、2020年夏、観光産業の壊滅的なダメージ対策として、準備が整わないまま大混乱のなかでスタートした旅行商品の大幅割引を行った「Go Toトラベルキャンペーン」だ。

私も以前このコラムで何度かこのキャンペーンについては、少々辛口の意見を書いたが、突貫工事的な制度設計の甘さや事務作業の煩雑さ、極めつけは事務局を担っていた大手観光事業者の不正受給が発覚するなど、賛否両論が湧き起こったことは記憶に新しい。
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文・写真=古田菜穂子

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