コロナ後の観光 アナログなDX事業「ぎふ旅コイン」に期待


しかし、その年の11月半ばまでのGo Toトラベルキャンペーンの利用実績は、約5260万人泊ということで、やはり一般市民にとっては「割引」は魅力的であり、多くの人がこれを活用し、観光事業者にとっての対処療法的な救済策になったのは否めない。一方、その反動として、年末から2021年に向け再び感染者数が増加し、政府は全国一斉にGo To トラベル事業を停止する措置をとった。

その後は、東京オリンピック・パラリンピックをはさみながら、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出と停止を繰り返しつつ、その間、移動制限の解除の合間をぬって地域限定の割引事業などを各都道府県主導で実施し、1年が過ぎていった。

そして迎えた2022年、観光庁は3月21日にすべてのまん延防止等重点措置が解除されたことなどを踏まえ、同月26日、感染状況が落ち着いているステージ2相当以下の都道府県内の旅行への割引事業を財政的に支援する大型の「地域観光事業支援/需要創出策」を順次開始すると発表したのだ。

Go Toキャンペーンと大きく違うのは、お金は出すが、事業は国が主導ではなく、引き続き、各都道府県主導で行うというところで、内容はいままでとほぼ変わらず、観光客1人1泊5000円、または代金の50%を上限とした宿泊補助に加え、土産物店や飲食店、公共交通機関などで利用できる地域クーポンとして1人1泊2000円を上限に各都道府県に充当する補助金を交付するというものだった。

これが現在も続く「県民割」に相当し、利用条件はワクチンを3回接種済みであること、または検査結果が陰性であることの証明書があれば対象になるとした。

それら事業実施のための予算規模はなんと、総額約3300億円。数字で書いてもイメージがわかないほどの金額だ。素朴に、そのお金はどこから捻出されるのだろうとすら思ってしまう。

予算配分への違和感


いずれにしても、国は、その膨大な予算を、全国の都道府県に対して、前年度宿泊実績などを加味して事業予算を決定して、配分し、4月1日以降、準備が整った都道府県から、当初は5月31日(6月1日チェックアウト分)まで、この施策を実施することとした。

その後、対象エリアを県内旅行から近隣エリアへとひろげる「ブロック割」とし、期間も6月末と延長。感染状況の改善が確認できれば、7月前半より全国を対象とした、あらたなGo To キャンペーンとしての「全国旅行支援」を実施したいと考えていた。

しかし前述したように、第7波到来による急速な感染再拡大を受け、全国旅行支援の実施は、当面、見送られる方針となった。そのかわりに県民割やブロック割を、一部地域を除き、8月31日(9月1日チェックアウト分)まで延長することとしたのだ。
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文・写真=古田菜穂子

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地域と観光が面白くなる新局面

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