コロナ後の観光 アナログなDX事業「ぎふ旅コイン」に期待


ふと私の住む岐阜県には、この事業で国からどれくらいの予算配分がされたのだろうとの疑問が浮かび、さっそく県の担当者に聞いてみたところ、1年間で約124億円とのことだった。やはり国の総額予算である3300億円同様、私にはこの数字が果たして充分なのかそうでないのかの想像ができなかった。

そこで内訳を尋ねると「この事業は以前のGo toキャンペーンとは違い、実施主体が各自治体なので、割引の充当金に加えて、例えばキャンペーンの広報活動費用や、じゃらんや楽天などのオンライントラベルエージェンシーとのやりとり、割引対象となる宿泊施設との交渉から支払いなど、もろもろすべての事務作業の経費も含まれている」とのことだった。

例えば、若干大げさかもしれないが100万人がこの割引を使用したとすると、単純計算で1人1泊5千円+2千円の地域クーポン代金の合計7千円×100万人で70億円。もし、2泊の人が10万人いたら14億円。まだよくわからないが、コロナ禍で落ち込んだ県の令和2年度の年間の県内宿泊者数が約356万人であることを考えると(令和2年岐阜県観光入込客統計調査より)、必ずしも潤沢だとは言えない気もする。

余談だが、先ほど書いた政府が予算配分決定の根拠にしたという各地域での前年度宿泊実績だが、この2年間、岐阜県はコロナ禍対応として、かなり厳しい対応をとってきた。そのため観光事業者は、軒並み長期の休業状態を強いられることとなっていた。

あまり厳しい対応をしなかった(つまりまん延防止期間をなどの設定が短いなどの)自治体と比べると、当然ながら宿泊数は激減となっている。要するにコロナ禍対応でほぼ休業させていた県と、休業させずに観光客を受け入れてきた県との宿泊実績を比べれば、その結果は明白で、宿泊数が多い県の予算配分を高くするという国の方針に、なんとも違和感を抱くのは私だけだろうか。

電子観光クーポン「ぎふ旅コイン」


話を岐阜県に戻そう。県では現在「旅して応援! ほっと一息、ぎふの旅キャンペーン」という名称で、県内の宿泊および日帰り旅行代金の割引を行っている。割引内容は、旅行代金の50%割引(上限:1人1泊あたり5000円割引)で、実施期間は、2022年5月9日から8月31日(9月1日チェックアウト分)としており、このあたりは他県とほぼ足並みを揃えている。



しかし、ここで注目したいのが、昨年より県が独自で工夫した電子観光クーポン「ぎふ旅コイン」の実施だ。「ぎふ旅コイン」とは、1人1泊あたり(日帰りの場合は1人1旅行)4001円以上の旅行代金に、2000円分の地域クーポンをプレゼントし、県内旅行中、加盟店でのお土産の購入や飲食等に使用できるというもので、期限内であれば帰宅後も使用可能だ。

ただし必ずスマートフォンから「ぎふ旅コイン」アプリをダウンロードし、そこにポイントを加算するという条件がついている。なぜならは、これは岐阜県の観光DX(デジタルトランスフォーメーション)推進という目的も加味して設計された事業だからだ。
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文・写真=古田菜穂子

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