中西:我が家は、妻が仕事をしていたので、一通りの家事育児は僕が担当していました。ただ、妻の方が料理が得意なので、大人が食べるご飯は担当してくれていましたね。基本的に、互いに好きなこと、得意なことを担うことにしているので、きっちり半分ずつシェアしよう、という意識はあまりないかもしれません。互いが全体像を把握していて、分担に納得していれば良いんだと思います。
ふたりでの産後育児が、良好なパートナーシップの基盤に
──育休を取得したことで、夫婦のパートナーシップに変化はありました?
成川:3人目で初めて育休を取ったということもありますが、妻への感謝とリスペクトの気持ちが増しました。家事育児は本当にマルチタスクで、実際にやるだけじゃなくて考えることも多い。これまでぜんぶ妻が引き受けてくれていたんだなあと思うと頭が上がりません。帰ってきて「仕事をして疲れているんだ」なんて口が裂けても言えないですよ。仕事に行くときも「行ってきます」ではなく「行かせていただきます」という気持ちでいます。そうやって、自分の都合だけじゃなく、妻の気持ちを考えることができるようになったのは大きな変化ですね。
──ほお、すばらしい。 家事育児は名もなきもの、見えにくいものも多いですもんね。
税所:そうそう、育休前のアドバイスとして、「そんなに長く一緒にいたら、夫婦関係が悪化するんじゃない?」っていうのもあったんですよ。
中西:それはたぶん、コロナ禍の在宅ワークもそうだと思うんですけど、夫婦関係が「悪化する」んじゃなくて「露わになる」んですよね。育児という大きな共同プロジェクトを前に、包み隠してなんとかやってきたことがごまかせなくなってくるというか。
成川:スウェーデンでは、育休改革で男性の取得率が上昇した際、離婚率が12%から13%に上昇したけれど、その後5年のスパンで見ると変わらないという結果(山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』より)があるそう。つまり、育休によって人生のパートナーとしての相性が明らかになって離婚する時期が早まった、とも言えるんですよね。
──へえ。その点はみなさん、どうでしたか?
税所:もちろん衝突や喧嘩もあるけど、1人目、2人目が生まれる度に夫婦関係も変化していって、いい方向に進んでいるのかな、と思いますね。妻にすべてを任せるんじゃなくて、育休を取得して同じ方向を見て子育てすることで、家族として基盤ができた感じがあります。
成川:僕は育休前より妻のことが好きになったし、夫婦の仲が良くなった気がします。なんでかなと考えてみたんですが、育休を経て妻への感謝の気持ちが湧いたことで、この人を大事にしなくちゃと、「好きでいることを決めた」からだと思います。自分の中で良好なパートナーシップを育んでいくための、覚悟のようなものが芽生えたのかな、と。
中西:うちも妻の仕事場に家族で訪れたり、一緒にいる時間が増えたことで、育休から復帰した後も互いのコミュニケーションが深まったと感じています。「夫婦の愛情曲線」というグラフによれば、妻の産後に夫がどれだけ育児に関わるかが、将来にわたって夫婦関係が円満かどうかの分かれ道になる、とも言われていますしね。産後の一番大変なときに、子育てに一緒に取り組めるかどうかは、夫婦関係に少なからず影響があると思います。