競争社会のプレッシャーを解く 「パパ育休」で変わった人生観とは


──なるほどー。そもそものキャリアの捉え方、人生の見方のようなものが変化していったんですね。

成川:僕も今は仕事のペースは落としていますが、家族と過ごす時間が増えたことで幸福度が増した気がしています。とはいえ1年職場を離れて、復帰当初は自分だけが取り残されているような感覚もありました。「マミートラック」と言われる現象が肌で理解できた、というか。ただ一度昇っていくことから外れたことで、ずっと第一線にいなくてもいいやと心が軽くなった部分もありますね。

中西:ここにいる3人は、転職や起業などを経験しているから、比較的キャリアに対して柔軟な考えが根底にあるのかもしれませんね。社会学の中で「男性学」を研究されている田中俊之先生がおっしゃっていたのですが、男性は働き続けることが“暗黙の了解”とされていて、社会の中で出世を目指して競争し続けることが当たり前、というプレッシャーがあるんだと思います。成川さんの話にもあった通り、育休は、その思い込みをはずすための重要なきっかけになるのかもしれませんね。

役割分担し、家族で過ごす時間をより楽しく


──育休中はどんなふうに過ごしていたんでしょう?

税所:長男のときは、夫婦ともに1年の育休を取っていたので、ふたりでがっつり育児をして、余裕ができたタイミングでは家族で、お世話になった人たちに挨拶に行ったり、地方で暮らす友人を訪ねたりもしていました。「激しくドタバタ」する時期がふたりで育休を取ることで「ドタバタ」くらいにはなったので、育児も家族で過ごす時間も楽しめた。大変さよりも楽しさがまさっていたので、2人目にもつながったのかなと思います。

成川:僕は基本、いつもの朝ごはんを並べて、洗い物と洗濯をして、長男を幼稚園に送って、次男と公園で遊んで、掃除をして、夜は3人の子どもをお風呂に入れて……といったことを毎日繰り返していました。とはいえ最初の半年は、何かアウトプットしなきゃという強迫観念にかられていて、育休をテーマにした本を書いていまして。妻には呆れられました(笑)。やり切った残り半年は特に何もしなくても、ただ家族と過ごす時間が豊かだな〜と思っていましたね。

税所:結果的に成川さんは自分のやりたいこともして、家事育児にも貢献できたからよかったですよね。僕はですね、家事に関してはよく妻から怒られて、あんまり進歩もしなくて。自分の生活力が高くないことがよくわかりました(笑)。

昔からどうしても朝起きられなくて、育休中なのに妻が追い詰められて1日家出したこともありましたから。焦りましたよ。ダメでしたね、自分。ただ子どもを外に連れ出して遊ぶのは大の得意。育休中に夫婦の得手不得手が明らかになって、家事育児の役割分担ができるようになったのはよかったかな。

成川:うちも家事育児において、献立とか体調管理とか考える系は妻が担当、お風呂に入れるとか遊ぶとか動く系は僕が担当している感じです。


次ページ > 夫婦のパートナーシップに変化は?

文=徳 瑠里香

ForbesBrandVoice

人気記事