収入の不安を解消してくれる、育児休業の給付金
──育休を取るうえで、収入面やキャリアにおける不安、ハードルはありませんでしたか?
税所:収入面で言えば、育児休業の給付金は大きいですよね。1年の育休のうち、始めの半年は手取りの約8割、残り半年は手取りの6割弱が給付されます。週5日フルで働いて得ている給与と大きく変わらない額が育児をしていても得られるなら、絶対取ったほうがいいな! と僕は思いました。
成川:手取りが約30万円の場合、最初の半年は月約24万円、残りの半年は月約18万円がもらえます。捉え方は人それぞれだと思いますが、仕事を休んでも子育てをして家庭に貢献することで、250万円が国から支給されるわけです。
中西:収入面としては、おふたりのおっしゃる通り、制度を正しく理解すれば不安は解消されると思います。ただし、給付金が支給されるまで2〜3カ月くらいかかるので、その間の蓄えは必要ですね。
あと、僕は同じ職種の人が職場にいなかったので、仕事に穴を開けて大丈夫か? という心配はありました。その点は、妊娠がわかった時点ですぐに上司と人事に相談をして、後任や引き継ぎのスケジュールを決めたことで、スムーズに育休に入れたと思っています。制度上は1カ月前までに申請、となっていますが、できれば半年前、遅くとも2〜3カ月前には相談できると会社も備えやすいのかなと。
「こうあらねばならない」という思い込みをはずすきっかけに
税所:キャリアに関しては、会社の男性の先輩には心配されましたね。「ビジネスマンとして成長する大事な時期を育休で使っていいの?」と。僕もそれなりにプレッシャーを感じていたので、育休を取る前に営業成績を上げなくちゃ、とモーレツに働いていました。
──実際に育休を取ってみてどうでした? そのアドバイスは……
税所:たしかに、会社に所属して昇進を目指すという価値基準においては、一理あるなと思います。僕も最初、活躍している同世代を見て育休を取ってる場合じゃないかも、と焦る気持ちもありましたし。でも行ったり来たりしながら次第に、そもそも、具体的なアウトプットや成果を出し続けることに価値を置く道からはズレた、まったく違う生き方があるよね、と気づいていった。そのプロセスのはじまりが育休だったんです。
育休を取る前、一橋大学の楠木建先生が「人生は常にトレードオフ。何かを決断すればいい面も悪い面も引き受けなくちゃいけない。個人的に人生は『何かを達成した』ことよりも『豊かな思い出』のほうが大事だと思う」といった言葉をかけてくれたんです。育休を取ってみて、その言葉が実感として腑に落ちました。キャリアは途切れたとしてもいくらでも取り返せるけど、幼い子どもと一緒に過ごす時間は取り戻せない。今は、キャリアアップよりも思い出づくりを優先しています。