経産省に聞く。サーキュラーエコノミーの新たな「文脈」とは


サーキュラーエコノミーの役割


循環経済ビジョン2020では、「環境活動としての3Rから経済活動としての循環経済への転換」という大きな方向性が示された。

一方で、現在の世界のサーキュラーエコノミーを取り巻く動向を見てみると、カーボンニュートラルの実現、コロナ禍によりさらに関心が高まった人々のウェルビーイングの実現、生物多様性の保全・再生、そして国際情勢に端を発する物資や資源の供給リスクへの対応など、サーキュラーエコノミーへの移行の必要性を説くナラティブは拡散しつつあるようにも感じる。

こうした様々な視点に対し、羽田氏はサーキュラーエコノミーを全体の中でどのように位置づけているのだろうか。

羽田氏「サーキュラーエコノミー自体はあくまで手段だと思っています。サーキュラーエコノミーの追求により資源の利用量が少なくなる。それ自体は目的ではあるものの、カーボンニュートラルに反する資源の循環利用は難しいですし、生物多様性を損なってまでリサイクルをするのも難しい。一方で、資源循環という方法が役に立つ場面は増えていると思っており、以前であればそれは最終処分場の逼迫に対する対応だったわけですが、今ではサプライチェーンの寸断や物資や資源の効率的な利用などの視点から考えることができます」

「また、経済安全保障の話もあるのですが、それ自体は対象が狭く限定された議論ではあります。経済安全保障では捉えがたい広い範囲において、たとえ完全な自立は難しいとしてもある程度自分でコントロールし、レジリエンスを保てるかという観点からも、循環的な物資や資源の循環利用という考え方が出てくるのかなと思っています」

様々な文脈の中で語られることが多く、未だその目的や概念について一つの統一した定義があるわけではないサーキュラーエコノミーだが、昨今の国際情勢の変化が資源循環型の経済・社会システムへと移行する必要性に対する認識をますます高めていることは間違いない。

現在、世界ではサーキュラーエコノミーの国際標準化に向けたISO/TC323の検討も進められており、日本も議論に加わっているが、今後、サーキュラーエコノミーに関してどのような共通認識が形作られていくのかにも注目したいところだ。

まずは手を動かす


ここまで循環経済ビジョン2020公表以降の日本の動きと、今後の方向性についてご紹介してきたが、これらの流れを踏まえ、私たち一人一人や日本企業はどのような点に意識してこれからサーキュラーエコノミーに取り組んでいけばよいのだろうか。

最後に、羽田氏よりエールの言葉をいただいた。

羽田氏「ぜひ、一緒に進めていきましょう。サーキュラーエコノミーへの移行の鍵は連携だと思っています。世界ではサーキュラーエコノミーを標準化しようとする動きが進んでいます。なるべく早めに考えて早めに手を動かしてみることで、大きなビジネスチャンスもあると思っています。私たちもこれから循環経済ビジョン2020を具現化していきたいと思っていますので、日常的に色々な企業の皆様と対話させていただきながら、課題や機会を可視化しながらサーキュラーエコノミーへのトランジションの絵姿を描き、その動きを大きくしていきたいですね」



編集後記


2020年5月に公表された循環経済ビジョン2020。すでにこの2年間で様々な動きが起こっているものの、その具現化はこれからだ。

経産省では、産業構造審議会総会での「成長志向型の資源自律経済の確立」の打ち出しを皮切りに、同ビジョンの具体化に向けて検討を始めるという。そして、そのビジョンを具現化できるかどうかは、紛れもなく私たち一人一人にかかっている。

サーキュラーエコノミーの実現に向けて、企業人として、消費者として、投資家として、どのような立場にせよ私たちにできることはたくさんある。ぜひ、持続可能な未来に向けた新しい経済・社会システムをつくるという壮大なビジョンの実現にあなたも加わってみてはいかがだろうか?

【参照サイト】
・経済産業省「循環経済ビジョン2020」
・経済産業省「第30回 産業構造審議会総会」
・環境省「プラスチック資源循環」

文=加藤佑

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