経産省に聞く。サーキュラーエコノミーの新たな「文脈」とは


「消費者にどのようにサーキュラーエコノミーの価値を感じていただくかという点では、企業がそれぞれに声を上げるだけでは足りない、というご意見をたくさんいただきました。そのため、2年目の活動としては、カーボンニュートラルとの関わりという点を少しずつ可視化していきたいなと思っています。すでに自動車分野など政府も一緒になって進めている分野もありますが、1.5度という目標の下でカーボンフットプリントの視点から再生材やサーキュラーエコノミーの取り組みの価値が見えてくると、消費者やステークホルダーに対する分かりやすい指標になるのではないかと考えています」

あらゆるステークホルダーの中でも企業に継続的に活動資金をインプットできるのは投資家・金融機関と消費者しかない。

カーボンフットプリントの可視化や環境配慮設計製品の認定など、積極的にサーキュラーエコノミーに取り組んでいる製品をより正確に判断し、投資や消費行動を通じて支援できる環境を整えていくことは、企業にとっても大きなメリットとなる。



プラスチック資源循環促進法の出だしは?


2050年までのカーボンニュートラル宣言に加えて日本のサーキュラーエコノミーにおける大きな転換点となっているのが、2022年4月から施行されたプラスチック資源循環促進法だ。

施行から3カ月が経過し、国内でも既に多くの企業や自治体による取り組みが出てきているが、政府は今後、プラスチックの環境配慮設計に関する認定基準を、製品分野ごとに定めていく予定となっている。

羽田氏は現状の動きをどのように見ているのだろうか。

羽田氏「環境配慮設計については、法律が始まる前から様々な取り組みが生まれています。設計の認定についてはこれから製品分野ごとに認定基準を作っていくのですが、環境配慮設計に関する認定自体が国として初めてのこととなります。既に業界による環境配慮設計のガイドラインがある場合、そのガイドラインに沿って企業等が製品設計に配慮しているところがスタート地点となる訳ですが、ここからさらに一段進めると一体何ができるのか、製品分野ごとに業界団体等と話をしています。製品ごとに強度や衛生面など様々な製品機能に関する要請があるなかで、イノベーションを阻害しないように、また、製品の使われ方や廃棄・リサイクルのされ方にも配慮しながら案を作っていきたいと考えています」

サーキュラーエコノミー実現の肝となるのは、やはり何といっても廃棄物を出すことなく、資源をできる限り高い価値を保ったまま長く循環させ続けられるような製品・サービスの設計だ。その意味で、環境配慮型設計の標準化および認定制度は、日本におけるプラスチックのサーキュラーエコノミーを加速するうえで大きな鍵を握る。今後の動きに注目したいところだ。

一方で、設計ではなく回収における取り組み状況はどうだろうか。

プラスチック資源循環促進法の施行に先立ち、環境省が昨年に市区町村に対して実施したアンケートによると、回答した1455団体のうち、すでにプラスチック製容器包装とプラスチック製品の廃棄物の一括回収・リサイクルに取り組んでいる自治体は31団体、一括回収後に熱回収等を実施している自治体は66団体、5年以内に実施を検討している自治体は85団体だった。

羽田氏「東京の渋谷区など新たに市区町村でも一括回収が始まる自治体がありますが、まだ数はそれほど多くありません。市区町村の廃棄物の回収や、住民の方々への周知など色々な要素があり、また、コスト面が大きいと感じている自治体も一定数あるようです。先んじて取り組む自治体の学びを展開しながら、徐々に広げていきたいと思います」

「また、企業による自主回収についても認定を受ける仕組みがあります。認定を取得したいと、様々な企業からご相談を受けるなかで、運送コストの課題が見えてきています。どのように安全や衛生を守りながら効率的に資源回収をするかという点は今後の課題です。物流の2024年問題(ドライバーの時間外労働規制により物流業界全体が人手不足に陥ると予測されている)も影響を与えると思われます」
次ページ > 自主回収の意図は?

文=加藤佑

ForbesBrandVoice

人気記事