経産省に聞く。サーキュラーエコノミーの新たな「文脈」とは


「昨年のCOPで1.5度という目標が提示されましたし、日本もそれに先んじて2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。カーボンニュートラルに向けた具体的な道筋が見え、そのビルディング・ブロックとしてサーキュラーエコノミーが役に立てるということが改めて企業に認識されたというのは大きいですね。経産省ではGXリーグの下、カーボンニュートラル実現に向けたアライアンスを企業に呼び掛けているのですが、そこでもスコープ3のサプライチェーンを通じた排出量を下げるという点に多くの企業が興味を持っていただいています」

長いようで短い2年だったと振り返る羽田氏。SDGsや脱炭素といった言葉と比較するとまだまだ浸透度は低いかもしれないが、政府による積極的なアクションと世界的な潮流が重なる中で、日本においても着実にサーキュラーエコノミーに向けた取り組みが前進した2年間だと言えるのではないだろうか。

J4CEの成果と見えてきた課題


2年間の大まかな流れを振り返ったところで、省庁による具体的な取り組みについても見ていきたい。

2021年3月に経産省、環境省、経団連の三者により設立された「循環経済パートナーシップ(J4CE)」は、2022年の4月に初年度の活動報告書を公表した。

同報告書には、経団連の会員企業・団体を中心とする140件のサーキュラーエコノミー取組事例に加えて、4回にわたる官民対話の議論により抽出されたサーキュラーエコノミーへの移行に向けた課題が非常に分かりやすく整理されている。

J4CEの一年の活動成果について、羽田氏はどのように見ているのだろうか。

羽田氏「プラスチックについてはCLOMAという団体もあり色々な企業が連携を始めていたのですが、何よりプラスチックにとどまらないサーキュラーエコノミーに関わる議論の場ができたという点が意義深いことだと感じています。サプライチェーン上の様々なライフサイクルの段階に関わる企業が一堂に会してみたら、企業が悩んでいることや課題は割と収斂していくというのは一つの学びでした。また、私たちは循環経済ビジョン2020の中でもサーキュラーエコノミーに事業戦略として取り組むことの重要性や、規制ではなく企業自身がどのようにストーリーをつくり、ESG投資を呼び込むかという点がとても大事だと思っており、そうした対話を企業と投資家等とが参加する場でできたというのも大きかったですね」

羽田氏によると、まだまだ啓蒙フェーズとはいえ、金融機関も少しずつサーキュラーエコノミーに興味を持ち始めており、J4CEの活動について個別の問い合わせも来ているとのことだ。

実際に、三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険が今年の4月1日からプラスチック資源循環促進法に基づく環境配慮設計の認定を取得し中小企業等に対して、一部の賠償責任保険の保険料の割引制度を導入すると発表するなど、金融機関の中でも脱炭素に加えてサーキュラーエコノミーへの移行を後押ししようという動きが生まれつつある。

また、リコーは、日本企業初となる「開示・対話ガイダンス」に沿った形での報告書を2022年3月に公表した。

なお、活動報告書の中では「制度・ルール」「コスト・投資」「消費者・普及啓発」「ビジネスモデル・技術」という4つの視点からサーキュラーエコノミーへの移行に向けた課題が整理されているが、その中でも特に羽田氏が重要だと感じているのは「消費者・普及啓発」だという。
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文=加藤佑

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