経済・社会

2022.07.15 07:30

経産省に聞く。サーキュラーエコノミーの新たな「文脈」とは

※この記事は、2022年7月4日にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

2020年5月に経済産業省(以下、経産省)が日本の循環経済の道標と位置付ける「循環経済ビジョン2020」を公表してから、すでに2年が経過した。

その間、日本では2020年10月に政府が2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、2021年1月には経産省が世界初となるサーキュラーエコノミーに特化した企業と投資家等の対話・開示ガイダンスとなる「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス(開示・対話ガイダンス)」を公表した。

そして同年3月には経産省・環境省・日本経済団体連合会(以下、経団連)による循環経済パートナーシップ(J4CE:ジェイフォース)が設立され、2022年4月にはプラスチック資源循環促進法が施行されるなど、この2年で日本のサーキュラーエコノミーを取り巻く環境は急速に変化してきた。

そのようななか、経産省は2022年5月に開催された産業構造審議会総会のなかで新たに「成長志向型の資源自律経済の確立」という考え方を打ち出した。

コロナ禍やウクライナ侵攻など国際情勢の変化により物資や資源の供給リスクが高まり、今後も世界人口や資源利用の増加が見込まれるなか、特定の国に対する物資や資源の依存率を下げ、より自律的で強靭な循環経済システムを構築し、日本モデルの技術・制度・システムの海外展開などを通じて、他国にとっての不可欠性の確保、国際競争力の向上と持続可能な成長を目指すという考え方だ。

2020年からの2年で日本のサーキュラーエコノミーを取り巻く環境はどのように変化し、どのような課題が見えてきているのか。

また、経産省が提案する「成長志向型の資源自律経済の確立」の要諦とは何なのか。Circular Economy Hub編集部では、日本のサーキュラーエコノミーの現在地と未来について、経済産業省 産業技術環境局 資源循環経済課長 羽田由美子氏にお話をお伺いしてきた。

日本のサーキュラーエコノミーの現在地


循環経済ビジョン2020の公表から約2年。羽田氏は、この2年間の日本国内におけるサーキュラーエコノミーの動きをどのように見ているのだろうか。

羽田氏「循環経済ビジョン2020では、3Rや廃棄物を減らしていくという環境活動に加え、経済活動として稼ぐモデルを考えていくという視点を盛り込みました。そしてその後に、開示・対話ガイダンスを公表したわけですが、その後の大きな動きはやはりプラスチック資源循環促進法です。国内でプラスチックの法律を作っただけではなく、国際的にもプラスチック汚染対策に関する条約交渉が始まるという意味でも大きなスタート地点になりました」

2022年3月、ケニアの首都ナイロビで開催されたUNEA(国連環境総会)において175カ国がプラスチック汚染対策を目的とする国際条約に向けた交渉を開始することに合意した。

この決議は2024年末までに条約案をまとめることを目指しており、実現すれば法的拘束力を持つ世界初のプラスチック条約となるため、環境分野においてはパリ合意以来の歴史的快挙になると評する声もある。

「また、それに伴い企業の動きも非常に加速していると感じます。特にプラスチックの分野は過去からの蓄積があり、リサイクルの技術や関連のビジネスモデルは既にあったと思うのですが、ここにきてさらに、プラスチックのケミカルリサイクル・マテリアルリサイクル等の実証や再利用に向けた新技術の研究開発、2019年に設立されたCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)などの企業間連携も目に見える形になってきています。さらに、企業間だけではなく、神戸市など自治体が旗を振って、競合の関係にある企業を巻き込む形でサプライチェーン全体での取り組みなども進んできています」


経済産業省資源循環経済課 産業技術環境局 資源循環経済課長 羽田由美子氏

加えて、羽田氏は脱炭素の潮流もサーキュラーエコノミーの加速に大きな影響を与えたと話す。
次ページ > カーボンニュートラル実現に向けて

文=加藤佑

ForbesBrandVoice

人気記事