子ども向けオンライン学習サービス「スコラボ」を展開するMinedの創業者、前田智大は人生の展望をそう語る。続けて「学んでやりたいことができるようになることは、そこに辿り着くための手段」だとも。
2021年7月にサービスを開始したスコラボは、まさに人々が楽しく幸せに生きるための学びを提供するサービスだ。現在は主に小中学生を対象に約120のクラスを提供している。
最大の特徴は、子どもが自らの興味や関心に応じて好きなクラスを選べること。クラスでは講師が一方的に話すのではなく、生徒もアクティブに参加する。授業の中で考え、質問し、講師や生徒同士での議論を通じて興味や関心を深めていく仕組みだ。子どもの学習意欲を刺激し、学ぶ楽しみを強く実感できるように設計されている。
前田は、名門の灘中・灘高の出身で、高校時代には国際生物オリンピックで銀賞を受賞。大学からは米マサチューセッツ工科大学(MIT)で電子工学を専攻し、MITメディアラボで研究者の道を歩んできた。
アカデミックの世界にいた前田は、なぜ日本で教育事業を立ち上げるに至ったのか。
──元々は研究者を目指していたのですね。
そうなんです。小さい頃からものの仕組みを知りたい気持ちが強く、気になったことは納得するまで理解しないとほかのことができないタイプで。特に理系分野への興味が、強かったです。
中学2年生のときには、生物愛に溢れた先生の影響で生物が大好きになりました。もっと学びたいと思い、イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』を読んでみたら、進化論が論理的に解説してあって、暗記科目だと思っていた生物のイメージが変わりました。
その後、国際生物オリンピックに出たのをひとつのきっかけに、海外の大学受験を決めました。MITとスタンフォード、東京大学に合格し、奨学金の増額を勝ち取れたことからMITに進みました。
──世界有数の研究機関「MITメディアラボ」で、次世代を担う研究者として評価を受けていました。そこから起業家に転身しようと考えた理由は?
研究は、その価値への評価がわかるまで10年単位の時間がかかります。論文で賞を取ったり、引用されることで評価はされるが、「果たして今、自分が研究している内容が本当に役立つものなのか」「論文の評価だけで終わるのか」などと考え、フィードバックの遅さに悶々としていました。
そんなことを考えていたタイミングでソフトバンク創業者の孫正義さんが設立した孫正義育英財団に入りました。孫さんの講演を聞く機会があって、起業家として社会を変える事業に関わることはエキサイティングだと感じました。
特にスタートアップは成果を出すまでのスピード感も求められるのでよりエキサイティングな部分がある。今も研究活動は好きですが、自分が身を置く環境としては起業の方が合っていると思いました。