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2022.03.11 07:30

日本の宇宙スタートアップが、世界最速で100億円を調達できた理由


「過去の経済を見ると、およそ10年サイクルで、東日本大震災や、新型コロナなど想定外の理由により不況がきています。長い開発・製造期間を伴うハードウェアを扱う会社でもあるので、資金はいただける時にしっかり確保しておこうと考えていました。キャッシュリッチになったことで事業に集中できたのはプラスだったと思います」

「半年で潰れるかもしれない」


新井は「研究者が創業にあたってまずやるべきは、ビジネスサイドを任せられる人を外から探してくること」と強調する。

研究者は研究費の調達経験を持つものの、それは事業成長を見込むVCの投資判断とはロジックが異なるため、「事業の資金調達は研究者にとって未知であり、リスクの高すぎる仕事だ」という。

シンスペクティブでいうと、研究者である共同創業者の白坂は、経営や資金調達に長けた人材として、新井を引き入れたのだ。

しかし、組織作りはすんなりとは行かなかった。とりわけ苦戦したのはエンジニア採用だった。

日本において優秀なエンジニアは大学や大企業など、安定した収入のある組織に所属していることが多く、リスクを伴う創業間もないスタートアップへの転職に積極的ではない。そのうえ、スタートアップにとっては文化や実力の合わない人を採用してしまうことのリスクもはらむ。

ここであえて新井は「半年で潰れるかもしれない」と、素直に伝えることにした。実質的に「半年契約」をもちかけたのだ。

「これがいい『リトマス試験紙』になりました。長期のキャリアプランのなかで会社に縛られず、自分の可能性を磨くために弊社に時間を投資する考え方をもつ人は、半年契約に抵抗がありませんでした。安定を求める人は互いにマッチしない。結果的に、実力と覚悟のある人だけが集まり、創業期には離職者が一人も出ませんでした」

他にも、専門外のことにもチャレンジすること、コミュニケーションが問題なく取れることも、採用時には重視した。会社として成長してきた現在は、会社のミッションやビジョンに共感できるかどうかを、採用の基準にしている。

シンスペクティブには、24カ国140名のメンバーが集まり、海外進出も本格化している。

「今年1年で200名を超えるチームに増やします。国内の顧客基盤と生産体制を固めるだけでなく、既にアクティブに動いているシンガポールの子会社を基点に、グローバル事業にも力を入れていきたい」

文=島田祥輔 取材・編集=露原直人

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