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2022.03.10 11:00

創業初期に「50代」を積極採用 半導体ベンチャーの成功と失敗

CEOの人羅俊実(提供=FLOSFIA)

CEOの人羅俊実(提供=FLOSFIA)

2011年3月に創業した京都大学発ベンチャーの「FLOSFIA(フロスフィア)」は、パワー半導体の社会実装を目指す。パワー半導体とは、高い電力や電圧にも耐えられる半導体で、ACアダプターや家電、太陽光発電など幅広く使われるものだ。

使用される材料はシリコンが主流だが、フロスフィアはこれまで使用されてこなかった「酸化ガリウム」を用いた半導体の製造開発にあたる。現在はサンプルを出荷し、実用化を目指している。

酸化ガリウムによって、電力効率は従来の10倍になると見込まれており、フロスティアCEOの人羅俊実は、「実装されれば電気自動車やロボット、小型電源の領域で市場規模が一桁上がる」という。

着実に資金調達も行い、2021年3月時点での資本金等は約43億円。創業から10年超、ここまでどのような紆余曲折を経てきたのか。人羅と、取締役の間嶋千波に話を聞いた。


──人羅さんが起業家を志したきっかけは。

人羅俊実(以下、人羅):実は、老人ホームで働いていた時期があるのですが、その環境でどうしても高齢者の死に際に触れる機会が多く、自分の生き方や人生を考えるようになりました。「このまま死んでいってもいいのか、挑戦しなくてもいいのか」と。

また、老人ホームの経営は落ち着かない状況で、上の人間に意見することもあったのですが、「現場の視点ではなく経営者の目線で語れるようになりたい」と考え、独学でMBAを学ぶようになりました。

その流れで、起業に挑戦してみたいと思うようになりました。最初は知り合いの縁で大学発の半導体スタートアップである「ALGAN」の起業に携わり、フロスフィアは2社目の起業になります。

失敗から生まれた独自技術


──フロスフィアのCEOになった経緯は。

人羅:フロスフィアの事業の骨格となるのは、高性能なろ過膜を作る「ミストCVD法」という技術です。酸化ガリウムは、この技術によって生成されています。

ろ過膜を使って海水を淡水化するという事業を行うため、京都大学工学研究科の藤田静雄教授の研究室の学生が中心となって創業しました。

当時の社名は「ROCA」で、私はALGANに軸足を置きながら意見を出す共同創業者という立場でした。

しかし、資金調達や人材集めがうまくいかず、技術面でのハードルも高かったため、​​ROCAのメンバーは事業としての限界を感じ始めていました。その際にメンバーから「起業経験のある人羅さんが代表をやってくれませんか」頼まれ、引き受けることにしたのです。

2012年6月にCEOに就任してすぐに「ミストCVD法」でなにができるかをいちから考え直し、ひと月ほどで、事業を酸化ガリウムを使った半導体に絞ることを決めました。そして2014年、社名を「FLOSFIA」に変更しました。「智慧(ちえ、古代ギリシャ語でsophia)の流れ(flow)を活用し人類の進歩に貢献する」との意味が込められています。

人羅:酸化ガリウムを扱う会社はほかにもあります。しかし私たちはα型という特殊な結晶構造の酸化ガリウムを半導体材料として扱っていて、それは弊社が持つ唯一無二の技術です。というのも、この物質は自然界に存在せず、藤田研究室で実験中の失敗からたまたま生まれたものだからです。
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文=今井明子 取材・編集=露原直人

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