「面白いことをしたい」シニア層
人羅:もうひとり、会社のキーマンとして挙げられるのがCSO(チーフサイエンスオフィサー)の四戸孝です。彼はもともと東芝に勤めていて、半導体開発の領域では業界の超有名人で、私からラブコールを送って入社してもらいました。
有名人ですから、気合を入れて口説くつもりでいたのですが、意外とあっさり来てくれたんです。運よく定年を控えて現場を離れるタイミングで、「もっと面白いことをしたい」という思いがあったようで、すぐに入社を決めてくれました。
シニア層の方は、能力があっても一線から外れ、やがて役職定年を迎えます。再就職しても給与はどんどん下がっていく。実はスタートアップにとってはアプローチしやすい給与で採用の相談ができるんです。実際、スキルを活かせない職より新しいことをしてみたいという方がたくさんいました。
また、特にわれわれのような大学発スタートアップの場合、創業初期は技術の知識と経験が豊富な人が必要です。
四戸と同様の思いを持った経験豊富な技術者がたくさん入社してくれたため、創業初期は50代の比率がとても多かったんです。
ある程度技術ができたあとは、会社としてスピードが求められますので、最近では若手や中堅を増やしています。彼らの行動力は、新しいものを作っていく局面で欠かせません。
ただ、失敗もたくさんありました。スタートアップなので、創業当初はとがった人も採用してきました。
例えば、24時間研究活動に没頭して会社に寝泊まりすることで、誰も見つけなかったデータを発見したという方や、面接中でもお客様の前でも、人目を気にすることなくパソコンを開いて自分の仕事に没頭する人など。ひと癖ある人を採ることで新しいものを生み出そうとしましたが、これがうまくいかなかった。
間嶋:そうした人たちは、自分のやりたいことを優先して、チームが目指すべき方向を向いてくれませんでしたね。だからといって、逆に組織に従順な人を採用すると、スキルや経験を活かしきれないこともありました。
弊社で成果を出せそうな人を採用するためにどうすべきか、試行錯誤した結果、現在の採用面接では自己紹介や職務経歴はあまり問わないようにしています。オンオフ関係なく、その人がどのような経緯で何に取り組んできたのか、そこでどのような創意工夫をしてきたか、具体的な部分をものすごくしつこく聞きます。
人羅:独特な面接方法だと思いますが、この方法で最初からやっておけばよかったなと反省しています。失敗経験も生かしながら、今後は会社としてのチャレンジを面白がって行動できる人を積極的に採用し、成果にこだわっていきます。