ただ時代は変わり、現在はゲームプレーヤー同士がオンラインでつながっているため、「ゲームが上手い=すごい」と認知される。外では居場所のない子どもが、オンラインの世界ではヒーローと認められ自己承認欲求を満たす。これでは、引きこもり、ゲームに依存するのも当然だ。
ではどのように登校を導き出すのか。
「学校でゲームをやっていいよ、と言われたらどうでしょうか。しかもその上手さを大人たちも認めてくれる。もはや、eスポーツは世界的なコンテンツです。学校で『君たちは間違っていない』と認められたら、不登校は解消されますよね」と学院長は熱を込める。
「私たちが、不登校の子どもたちを社会に送り出すことができれば、社会的意義があります。当初は『誰も耳をかしてくれない』と考えていましたが、2020年の暮れ、NTTにお願いしたところ『大学進学までもパッケージ化してくれるなら』と二つ返事をいただきました。
出口の見えないトンネルの中にいたところから、(学院のロゴとなっている)光り輝く『eのマーク』が見えて来たのです」。
出口戦略を考えたカリキュラム
感心したのは、単に「プロゲーマー」だけを育成しようという方針ではなく、ストリーマー、ゲーム実況、プログラマー、ゲームアナリスト、ゲームライターなど、eスポーツ業界に関わる多種多様な職業のカリキュラムを設定している点。
野球をしていてもプロになれるのはほんのひと握り。ゲームの世界でもそれは同様であろうし、ゆえにゲーム関連の他職種への道をあらかじめ確保している。
もともと、自身もサッカープレーヤーだった学院長。世代的にJリーグはまだ存在せず、サッカーで稼ぐには、海外のクラブチームに入団するか、実業団に就職するしか道はなかった。
現在でも、スター選手は優遇されるものの、それ以外は引退するとセカンド・キャリアがない。ティーンの頃からサッカーに集中して来ると学歴もない、教育もない、資格もない、するともちろん仕事もない……。
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「それでは困る。サッカー関連でもトレーナー、栄養士、もしくはシューズを作る仕事に就くなど選択肢があります。
eスポーツも同様。プロゲーマーになれなかったので『仕事がありません』では困ります。この業界で働くためには、高校生のうちに何をしたらいいのか。もともと学校法人ですから、進学のノウハウもある。出口戦略をしっかり構築しています」
こうしたノウハウ、発想から、ゲーム関連の仕事について広範囲に学ぶことができる「eスポーツ高等学院」誕生に至った。