ホテルは、どんな目的であっても、訪れる人の日々を彩り、思い出に残る素晴らしい体験を提供するために客を迎え、産業として発展してきた。世界的には今後新興国の所得や中間所得者層の拡大などに牽引され、右肩上がりの成長が見込まれる。
ホテル産業は右肩上がりの成長を目指し、軒数は世界中で増え続ける/出典:Sustainable Hospitality Alliance「Global Hotel Decarbonisation Report」
一方で、地域の自然破壊を引き起こしたり、オーバーツーリズムによって地元住民の暮らしを逼迫したりするなど、環境や社会への負の影響を外部化することで成り立ってきた側面もある。産業の拡大に伴い、この負の影響も拡大することが懸念されている。
他の商業施設と比べても、今後ホテル産業の温室効果ガス(GHG)排出量は急増することが予想されている。
他の商業施設と比べても、ホテル産業が今後排出するGHGは急増するとみられる/出典:Sustainable Hospitality Alliance「Global Hotel Decarbonisation Report」
主要ホテルグループらが加盟し、より良い世界を実現するためのホスピタリティ産業のあり方を追求する「サステナブル・ホスピタリティ・アライアンス(Sustainable Hospitality Alliance)」によると、ホテル産業の成長と二酸化炭素の排出を分離するために、2030年までに二酸化炭素の排出量を66%、2050年までに90%削減する必要があるという。
今回編集部が訪れたのは、ホテル産業が直面する環境・社会負荷を削減することと素晴らしいラグジュアリー体験との調和を掲げ、ホテルの新たなあり方を提案する循環型ホテル「QOアムステルダム」だ。
QOアムステルダムは、大手ホテルグループIHGに属しながらも、独自の取り組みで持続可能なホテルの運営に取り組む。QOアムステルダムの総支配人ダンカン・フッドハート(Duncan Goedhart)氏に取材した。
「人生を大切にする」循環型ホテルQO
QOアムステルダムは、ホテルとして資源・エネルギー・水の循環の円を閉じるための実践を続けるサーキュラーホテルで、ヨーロッパで最もサステナブルなホテルのひとつです。
アムステル川のほとりに建つ、21階・288室を有するホテルは、サステナブルなホテルをつくることを夢見た事業家サンダー・ブエノ・デ・メスキータが掲げた、『人生を大切にする(Treating Life Well)』というビジョンのもと、2018年に開業しました。出張が多かったサンダーは、快適な体験を提供してくれるホテル産業は残念ながら多くの廃棄の上に成り立っていることを知っていたのです。