ビジネス

2022.01.29 11:00

循環型ホテル「QOアムステルダム」に朝食ビュッフェがない理由

田中友梨
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このホテルには環境負荷を低くするための建築技術が結集しています。まず、ホテルの建物に使われる原材料の3分の2は、2016年までロイヤル・シェル社がオフィスとして利用していた通称シェル・タワーに使われていた500キロものコンクリートをリサイクルしたものです。

さらに、蓄熱システム、ヒートポンプ、環境負荷が低いながらも気候などの外的要因に左右されず安定的に電力を供給できるバイオ熱電併給システムなどを組み合わせることで、環境負荷を極力減らしているのです。

建物側面には、1683個の金色のファサードパネルが自動で開閉・移動して適切な気候に保つ『カメレオン・スキン』が用いられており、システムが最適な状況で利用されれば暖房にかかるエネルギーの65%の節約、冷房に関しては90%の節約に貢献するとされています。QOは、環境配慮された優れた建築物を作るため先導的な取り組みを評価する国際基準の最高峰、LEEDプラチナ認証も取得しています。


ホテル館内の気候を最適に保つ「カメレオン・スキン」は訪れる度に異なる模様を見せてくれる/Image via QO Facebookページ

循環する仕組みはこれだけに留まりません。

ホテルの屋上には温室があり、魚の飼育と水耕栽培を組み合せて共生環境を生み出すアクアポニックスの仕組みで約70種類の野菜やハーブ、花、魚を育てており、収穫してレストランで提供しています。

移動には最もエコでヘルシーな手段、自転車をおすすめしています。ゲストが電動自転車を希望する場合に貸し出すのは電気自転車ですし、タクシーを呼ぶ際にも必ず電気自動車のタクシーが配車されるようになっています。

サプライヤーについても同じです。仕入れは、できるだけ地元の仕入先から。輸送距離や鮮度、地元経済のことなどを考えた際に地元から仕入れるのが最善だからです。私たちのシグニチャーレストラン「Persijn」も、オランダ料理レストランなんですよ。環境負荷を抑えた仕入れや文化を大切にする意味でも、それが私たちがこの場所で提供できる最も良いものだからです。


QOのキッチン&バーJuniper & Kinのある建物の屋上には温室があり、店内で提供するための野菜やフルーツ、魚などが飼育栽培されている/Juniper & Kin Facebookページ

ホテルを見回すと、目に入るすべてのものにサステナブルなストーリーがあるんです。すべてのものに歴史があり、思考が凝らされており、それがこのホテルの美しさだと感じます。ストーリーによって、私たちスタッフも、ゲストも、ホテルの細部にまで愛着を感じるのです。

例えば、今私たちの足元にあるカーペットは、現在海洋ごみとして問題視されている漁網をリサイクルした素材100%でできています。
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文 = 西崎こずえ

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