ビュッフェのないラグジュアリーホテル
ホテルを開業する時、私たちはひとつ大きな決断をしました。ホテルのレストランでは、一切ビュッフェの提供をせず、アラカルトメニューのみを提供するというものです。
ビュッフェは利益率が高く、オペレーションの負荷が少ないため、多くのホテルが採用していますが、実際には多くの食料廃棄を生み出す原因になっています。対するアラカルトメニューは、お客様が来て、注文してからメニューを一品一品作るスタイルです。よって、多くの人が同じ時間帯に集まりがちな朝食時などは食事を提供できるまでの間待たせてしまうリスクがあります。
ただ、一見コストがかかるように見えますが、廃棄が少ないということは、不要な食材を買う必要もなく、処分にもお金がかからないので、意外にも収支で合わせてみると大きく違わないこともわかってきます。本当に廃棄がほとんどでないため、体験としての心地良さも格別です。
Persijnで提供されるアラカルト朝食/Image via QO facebook page @smrtravels
多くの人にとって、ラグジュアリーホテルならば当然ビュッフェを提供しているはずだという『当たり前』があります。QOに来るゲストの多くもこうした期待値を持っている。だからこそ、ホテルに来る前に情報として、ビュッフェがないこと、そしてその理由を伝えることが重要になってきます。
また、もし知らずにホテルに来たとしても、フロントでチェックインの際に朝食のコンセプトを伝えることができれば大丈夫。とても良い取り組みとして理解し、ラグジュアリーなサービスの一環として受け止めてくれるでしょう。その人のためにその場で調理された、出来たての新鮮な食事を取ることができるのですから。
一方で、このストーリーがきちんとお客様に伝わっていないと、不満に感じられてしまうというリスクが生じます。ウェブサイトやメールを読んでもらえず、フロントが忙しすぎて説明できなかったとすると(どうしても100%防ぐのは難しいのですが)、苦情につながってしまうのです。
例えば出張客が、朝の5分でビュッフェラインから簡単に朝食を取って出かけようと考えていたのに、レストランに到着してみたら、注文してから料理が始まるアラカルトメニューしかなかったとします。するとこのゲストはすでに時間がないので、空腹のままホテルを後にし、打ち合わせに向かわなければなりません。これでは苦情につながってしまいますし、どれだけ大切なストーリーがあったとしても、そのゲストには届きませんね。
コミュニケーションがサステナブルな運営を完成させるためのパズルのピースになるのです。お客様がサステナブルなホテルの仕組みを理解し、協力し、また来たいと思ってくれるか否かはストーリーが伝わるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。そして、納得して賛同してくれたゲストは、周りの人たちにもストーリーを話し、輪を広げてくれる大切な存在になります。
サステナブルなストーリーが散りばめられたQOの客室/Image via QO Facebookページ