金沢では「それ」ができる。夜の美術館が見せたポテンシャル

撮影:下家康弘 提供:金沢21世紀美術館



撮影:下家康弘 提供:金沢21世紀美術館

今回のディナーのコンセプトは「eARTh」。EATとARTでこれからのEARTHを議論する意を込め、A_RESTAURANTを運営するOPENSAUCE Inc.とsecca inc.が共同で企画・制作を行なった。

「まず水をイメージさせる“クリスタルパン”や“酒蔵の水”からスタートし、最後は“大地に辿り着く”というストーリーをベースに、フルコースを組み立てました。地球環境に関してはさまざまな問題がありますが、それらを考えることのできる“食と美術の結合”を実現できればと思います」と高木シェフ。

食事体験のデザインと器を手がけたのはsecca。この日は、廃棄された陶片から再構成した「ゴミでできた器」に鮨を載せて提供するなど、一貫して自然や循環について“考えさせられる”料理がテーブルを彩った。

コロナ対策で席間は広く開いていたが、失われていたリアルな場と特別なシチュエーション、さらにはユニークな食体験とあり、テーブルの至る所で会話が弾んでいた。


撮影:下家康弘 提供:金沢21世紀美術館

普段見られない作品、聞けない音楽


続いて行われたのが、長谷川館長によるミュージアム・ツアー。この夜のためだけに収蔵庫から出され、エントランスや廊下を飾った特別展示の18作品のほか、美術館を代表する常設作品まで、合計27点を館長自らが解説。作家の経歴や作品の見方のほか、2004年の開館当時にキュレーターだった館長が作品を購入した際のエピソード、なかなか聞けない“アートのお値段”の話もあり、ゲストからは驚きの声が漏れていた。


撮影:下家康弘 提供:金沢21世紀美術館

特別展示のピースについて、館長は「高付加価値というテーマのもと、日頃使わないパブリックスペースを展示室にし、“美術館の見え方を変身させる”という視点で選びました。パブリックスペースでは、彫刻や大型絵画が映えるので、マスターピースが中心になっています」と言う。
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文=鈴木奈央

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