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2022.01.14

「公務員という職種はない。」の佐賀県庁で活躍 ミクシィ出身の熱血漢

 佐賀県の採用ポスター

公務員は、国の未来を背負う優秀な人が集まる職業の一つだった。それが今、優秀な若手世代から見放されつつあるという。

2020年11月に内閣人事局がまとめた資料によると、自己都合理由で20代の国家公務員総合職が87人も退職(2019年度)。6年前の21人から年々増加し、4倍を超える数となったのだ。また、国家公務員採用試験の総合職の申込者数は、ピーク時4万5254人(1996年度)に対し、2021年度は1万4310人と、5年連続の減少となった。記録が残る1985年度以降で最も少ない数字となっている。公務員はこのままで良いのだろうか、各自治体が模索をはじめている。

そんな中、特徴的な動きをしているのが佐賀県だ。採用に関するキャッチコピーは「公務員という職種はない。」。求めているのは、従来型の公務員ではなく、より良い佐賀をそれぞれの方法で目指そうとするプロフェッショナルたちだ。

2015年に山口祥義佐賀県知事が就任して以降、佐賀県庁では民間経験のある職員数が2倍に増加。アイディアを提案しやすい空気が醸成され、県政が変わったという。まさしく新たな風が吹いているのだ。今回は、そんな人材が集う「さが県産品流通デザイン公社」にフォーカスし、その現状を聞いた。

イノベーションが求められる佐賀県庁での仕事


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「脱・お役所食堂」の食堂は県民も利用する

佐賀県で何が起きているのか。まずは、大草人事課長にその現状を問うと、これまで実施された様々なコラボレーション企画がでてきた。

人気ゲーム『サガ』シリーズを展開するスクウェア・エニックスやアニメ『おそ松さん』らと組んだ情報発信による地方創生プロジェクト「サガプライズ!」はその代表格だ。そして、プロジェクトの中心を担ったのは、民間企業出身でありながら、佐賀県庁でプロフェッショナルな仕事をこなす県職員だという。

「公務員」という言葉には長く、画一的な仕事を行う人というイメージがあったのではないだろうか。しかし、佐賀県ではこれが払拭されつつある。2021年から県職員の採用コンセプトに「公務員という職種はない。」を掲げ、2021年度の民間経験者を対象とした採用試験には、約30人の募集に対し、600人以上もの応募があった。佐賀県庁では民間経験者の採用に積極的に取り組んでいるのだ。

その理由は明確だ。かつての自治体の仕事は、国が定める法令や通知に基づいて、ミスなく正確に事務を処理する能力が重視されていた。しかし今は、各自治体が地域の実情に応じて、どうすれば自分たちの地域が良くなっていくかを考える時代になった。今回のコロナ対策でも、それぞれの自治体が知恵を絞り、地域独自の様々な取り組みが生まれたのは記憶に新しい。

こうした時代には、既成概念にとらわれずイノベーションを起こす力が県庁に必要であり、多様な人材が集まり、様々な経験から生まれるアイディアが掛け合わされ、組織内に議論が巻き起こるのだ。
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文=上沼 祐樹 編集=石井 節子

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