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2022.01.14

「公務員という職種はない。」の佐賀県庁で活躍 ミクシィ出身の熱血漢

 佐賀県の採用ポスター


ポニーキャニオン+ミクシィ……民間経験をバックボーンに『熱血人材募集』に応えた


例えば、広告代理店に勤務していた職員がいる。映画のロケ誘致を任せたところ、タイの映画やドラマのロケ誘致を次々に成功させ、コロナ前は、ロケ先となった祐徳稲荷神社などの県内のスポットに多くの観光客を呼び込むことに繋がった。その後配属された部署でも、民間で培った営業力、企画力、人脈を発揮し、人気ユーチューバーとのコラボ企画を行うなど県の情報発信の中核を担っている。

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佐賀国民スポーツ大会(2024年開催)のピクトグラム

もちろん、県庁の土台を支える生え抜きの人材も大切だが、そこに民間経験者という新しい風を吹き込む力が加わることで、新たな「モノ」「コト」が生まれるのだという。予算管理や制度の運用といった、いわば県庁のインフラ部分では生え抜きの職員の方が力を発揮するかもしれない。様々なキャリアを持つ職員同士が互いに補完し合い、強みを活かし合うことでイノベーションを起こす環境が生まれるのだ。“佐賀県をより良くしたい”、その志が共通点である。

民間経験者の解像度を上げていこう。“佐賀県をより良くしたい”、その想いで7年前に入庁したのが、さが県産品流通デザイン公社の楢崎政彦氏だ。お隣の福岡県出身で、大学卒業後は東京へ。レコード会社・ポニーキャニオンやSNS運営会社・ミクシィに勤めた。音楽を軸にした経歴で、様々な歌手のプロモーションを担当。大手企業に勤めることで、担当プロモーションの反響の大きさを体験し、また、WEBならではの“顔が見えない反響”にも戸惑ったという。ミクシィ時代にリアルイベントの魅力に気づき、もっと身近な人に喜んでもらう仕事を模索し出した。

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さが県産品流通デザイン公社の楢崎政彦氏

「私も妻も福岡出身で、子供が小学校に上がるタイミングで、九州引越しを視野に入れておりました。“大きな組織での挑戦”と考えた時に、県庁の仕事が必然的に出てきました。なによりも、当時の佐賀県庁の中途採用コンセプトも尖っていました(笑)。目に炎が宿った星飛雄馬のようなビジュアルで『熱血人材募集』と謳っていました。他の県庁だと専門的な勉強をして成績の上位者が合格するんですが、佐賀県は面接と論文のみ。社会人経験を活かすのなら佐賀県と思いました」

同期入社には大手家具メーカーの広報部の人や、シンガポールでバナナを販売していた人がいた。アイデアを出して実行する能力のある人材が揃ったと分析する。

魅力があるのに『なんもなか』。再発見が必要


「福岡県と長崎県に挟まれた佐賀県の方々は遠慮がちな性格なんです。実際には魅力がたくさんあるのに『なんもなか』と言いがち。ですので、その魅力を再発見していけるメンバーが必要だと思いました。私は最初に広報課に所属したので、様々なコラボレーションを通じて、佐賀の魅力を発信。例えば、佐賀県の名物に呼子のイカがあります。イカつながりで任天堂の人気ゲーム『スプラトゥーン』とコラボレーションも実現しました。この時は、ミクシィ時代の人脈が活きましたね」

これまではイベントを実施しても、その場限りになりがちだった。だが、民間出身者が入ることで代理店に委託して、進行管理して終わりという流れが断ち切られた。

「代理店にすべて預けるのではなく、企画が必要なら企画が得意な人を探してきます。その分野を得意にしているクリエイターと一緒に作り上げるんです。イベントは開催側の強い思いがないと成功しないと思いますので」
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文=上沼 祐樹 編集=石井 節子

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