デジタル変革の旗手たちが語る、大企業への要件とは

撮影:伊藤 淳


谷本:もう少し深掘りして参りたいと思います。日本でデジタルトランスフォーメーションを進めていく時、先ずは全企業でデジタル・シフトしていかないといけないのですが、その前に、「リーダーシップ」や、「リーダーが危機感を持っている事」が重要だとお話で出ました。

例えば、「アメリカでGAFAが多くの企業を飲み込んでいった」とか「中国の小さい企業達がアリババに飲み込まれて、新たなシステムが生まれた」ような危機感が、まだ日本では醸成されていない。では、実際、どのように危機感をリーダーは捉え、そして、DX推進に繋げられるのか?

村上:「目の前にデータがあるのに活用出来ていない」という石倉さんのご指摘は、まさに企業の課題だと思います。それは何故かというと、会社、そして社員一人一人にビジョンが無いのが問題かと。「これがやりたい!これがしたい」という「To be」、つまり、どういった世界を作りたいかと一人一人が持っていなければいけない。トップが決めた戦略に従って、自分達が兵隊のように働くのが、これまでの日本企業の強い部分でもあり、日本式であったわけですが、デジタルでそれをやってしまうと間に合わないのでは、と思います。


撮影:伊藤 淳

加治:安宅さんの思考とデジタル庁の役割は、同じ発想に基づいているのでは、と思っていました。我々は、危機感を持っていて具体的なアクションは起こしています。が、アクションの起こし方が、前近代的といいますか。象徴的なのが、「縦割りの構造」です。そこを改善するために「横に対して、どう発想を広げていくか」が重要です。ルマーダは、2016年から横に広がっていったわけですが、横の動かし方こそが大切。つまり「知の深化」を、ずっとやってきた我々を、知の探索に向けて、いかに横に対して、「広げるか?」が重要ではないでしょうか。横側の組織に予算をもたらして、どう広げていけるか?達成目標を横側が納得する形にする。具体的にいえば、組織を横型にして予算編成を組んだり、ガバナンスを効かせたりして、パフォーマンスに繋がる発想に変えていく事が重要でしょう。

谷本:お話を伺っておりまして、開発という部分も大切なのですが、「カルチャー・チェンジ」が、とてつもなく重要と理解出来ました。でもそんなに簡単に実現出来るものでもない気がします。

安宅:戦後躍進したのは、元々あった企業でなく、若い人達が新しい事を仕掛けて生まれた会社です。ソニー、ホンダ、ワコールといったように。つまり、次世代の企業が生まれるには何が出来るかが、今、問われています。古河電気工業が独シーメンスと富士電機を作り、富士電機が富士通を生み出したように、新しい世代​の企業を誕生させるのが本当の意味での大企業です。それが出来るだけのパワーと人材を抱えているわけですから。


撮影:伊藤 淳
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文=中村麻美

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