デジタル変革の旗手たちが語る、大企業への要件とは

撮影:伊藤 淳


村上:私は損害保険の会社におります。損害保険はデジタルと遠い存在と思われるかもしれませんが、これまでも保険料の算定にはずっとデータを活用してきました。今は計算尺からコンピュータに変わっただけでなく、過去のデータのみならず、未来のデータを見ないといけない時代に変わってきたのです。そこで、デジタルを道具として使っていかなくてはいけない時代が到来しました。私自身、ITで災害復興などを支援する活動もさせていただいているのですが、そこで一番重要なのは、「情報」。被災地には、企業や団体など、色々なお立場の方々がいらっしゃいますが、データを活用していないのが現状です。これを、色々な団体で共通でデータを活用して活動を行えば、もっと効率よく進むのではないかと思っています。情報を瞬時に共有化出来るのがデジタル化のメリットなのではないでしょうか。

石倉:私も、「縦割りから横割りが大切」だと思います。私が考える「デジタル」の定義は、「壁を超える。色々な所へ繋ぐ」です。例えば、私自身、ワクチン接種ひとつとっても、区と都で繋がっていなかったりといった経験をしました。本来、プロジェクトは、横に繋がるもの。なので、デジタル庁では、官と民が繋がるようにと目を配っていますが、これは日本企業が抱えている問題なのではないでしょうか。プロジェクト・マネージメントは、経験すればするほど、上手になります。自分でも、試行錯誤しながら、の日々ですが。



安宅:デジタル監の前で国を主語にした話は言いにくいのですが(笑)。しいて申し上げるなら、3点あります。①デジタル化は、デジタルな人材、デジタルサイドの人間をど真ん中において推進していった方がいい。ニューエコノミー側、第三種人類側とオールド・エコノミーの方々とは思考回路が全く違うので。②デジタルはつなぎ合わせる力が強いので、徹底的に粉々にする=“粉々able”(こなごなアブル)な組織、業務にすることが極めて重要。③すぐに国はウォーターフォール的なグランドデザインから考えてしまいがちなのですが、それは無理なので、絶対に必要なものから作り、ゲリラ的にやる。そして、情報に関しては標準化とつながるようにする。

つまり、①②③を間違いを恐れる事なく推進する。フェイスブックが世界的なプレーヤーになるまで掲げていたモットーに「Move fast and break things」とあるのですが、まさにそれです。
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文=中村麻美

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