デジタル変革の旗手たちが語る、大企業への要件とは

撮影:伊藤 淳


谷本:では「国のDX」について、企業側から、国に求める事をお聞かせ願えますか。

村上:企業側からの視点からお話させていただきますと、国に対して「もっとフランクに話を出来る場」があればいいのかなと思います。

加治:僕は、逆の発想も重要ではないかと考えています。国に何かを問うのではなくて、「見てる側が、デジタル庁を応援する、盛り上げる」これが大切なのかな、と。一人一人が、参加意識を持つのがファースト・ステップです。先ずは、選挙に行って下さい(笑)。

石倉:デジタルは、「今後の社会を大きく変える」と思います。「あらゆる側面を大きく変える原動力」。でも、どの位の人が認識しているか?というと、疑問。何となく、このままいけるんじゃない?と思っている人も多い。社会を変えるというのは、いい事も起こるけれど、悪い事も起こる可能性がある。なので、「ポジティブ=プラスの面を、どんどんアピールしていく」のが大切。私は、「デジタル化を民間と政府で進めなければ、日本の将来はない」と思っています。では、行政のデジタル化ってどの位?といえば、日本は遅れています。外がよく見えているトップの一部の方を除いては、日本は危機感がない。「日本のデジタル化は、日本が存続する為の最後の切り札」だと考えています。

谷本:日本の危機感のなさとは、「こうありたい」というビジョンがないからなのでしょうか?

安宅:デジタル、データ×AIは、電気に近い技術革新と認識しています。あらゆる産業や領域が変わり、私達は日々体験しています。ですから、デジタルでどうするかと言っている場合でない。年末から5月末まで、国のデジタル・防災技術ワーキンググループ未来構想チームの座長を任命されていたのですが、その中でしみじみとよくわかったのは今後、大きな自然災害や更なるパンデミックが来ることを相当に前提にして社会を回さないといけないということです。なので、「ディザスター・レディ(disaster-ready)」・「パンデミック・レディ(pandemic-ready)」な状態にするためにこれまで培ってきた技術を全活用する、足りなければどんどん開発するという意識が必要。いかに「人間はサバイブ(human survival)」していくか?

デジタル防災的に、まず大切なのは「中央及び地方政府が、どのような状況下においても、24時間365日、落ちない」という事。その部分をデジタルと個々の力でカバー出来れば、と提言したい。「デジタルでどうなりますか?」という質問は無意味。デジタルを使ってあらゆる産業を刷新するための行動が大切だと思います。

加治:緩和と適応が重要の2つのアプローチから考えることがまず第一ステップかと思います。例えば、来週から行われるCOP26に注目していただきたい。政府と民間が胸襟を開いて対話する事が大切なのです。皆様は「水と平和と空気は無料」だと思っていますよね。第二次世界大戦後、スイスと日本を含む一握りの国だけが、平和を維持し続けてきた。それを守る為に、我々は企業戦略を理解しないといけないし、外交的な視点も加味していかなければならないかと思います。DXは安全保障とも深く関係しているのです。
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文=中村麻美

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