国際派ラグビークラブが育む、子どもたちが「正解のない時代を生き抜く」力


「また、世界中に友だちをつくるには、自分の気持ちや考えを相手に伝えるコミュニケーション力の育成も欠かせません。子どものうちから自分とは違うカルチャーや考え方と出会い、世の中にはいろんな人がいるんだという事実を学ぶことができれば、“違い”を前提にしたコミュニケーションを図ることができます。さまざまな国籍の子どもたちが在籍するSIRCには、そうした多様性への理解を育める環境があります」(徳増氏)

徳増氏が子どもたちに伝えたいのは、主体的な学びとは、何がしたいかという目的が先にあるということ。SIRCの子どもたちは、ラグビーで友だちと会話をしたい、仲良くなりたいといった強い動機があるからこそ、そのために「英語で話そう」「他の国々の文化や習慣を知ろう」といった自発的な行動に取り組めている。

どんな運動レベルの子どもでもラグビーを楽しめるように


SIRCでは、もうひとつ大切にしている価値観がある。それは「ラグビーをエンジョイしよう!」という考え方だ。

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SIRCのクラスは、いつも笑顔で溢れている。それはコーチも生徒も思う存分楽しんでいるから

日本では、ラグビーなどのスポーツは我慢して頑張ることが美徳で、それが勝利や人格形成につながると考えられてきた。しかし、スポーツの発祥の地であるイギリスでは、「スポーツは楽しむもの」という考え方が一般的だ。徳増氏がラグビー教育を学んだ地がイギリス南西部にあるウェールズであることや、コーチ陣も英語圏の出身者であることから、ラグビーを楽しむことを何よりも優先させている。

「スポーツは勝つことや何かを我慢することが目的なのではなく、プレーを楽しむこと自体が一番大切なんですね。そうしたスポーツの魅力を存分に感じてもらうために、どんな運動レベルの子どもでも楽しめるラグビー指導を心がけています。

その際、キーワードとなるのは、子どもたちを褒めて伸ばすこと。コーチたちは先週よりもパスがよくできていたら、『よくやった! 自分たちに拍手を送ろう』と称えますし、たとえミスをしてもそれを怒るのではなく、『Unlucky!(運が悪かった)Try again next time(次にがんばろう)』とフォローをし、自信を持たせます。

みんなで褒め合うカルチャーが浸透することで、子どもたちは自然と通うのが楽しくなり、ラグビーをエンジョイできるようになるんです」(徳増氏)

実際にSIRCに通う子どもたちの中には、運動が苦手で他のクラブに馴染めなかった子や海外出身であることを理由に仲間外れにされた経験を持つ子も在籍している。そういった子どもたちも「声を出していることを褒められて嬉しかった」「このクラブでは、日本人でも外国人でも家族のように接してくれる」と喜びの声を上げ、毎週日曜日の練習を心待ちにしている。

お互いを認め合うために必要な国籍や文化におけるダイバーシティだけではなく、スポーツを楽しむために必要な運動能力におけるダイバーシティも実現する。いろんな価値観を持つ子どもたちが集い、それぞれが自分らしい居場所を見つけられるのも、子どもたちがSIRCに惹きつけられる理由といえるだろう。

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ラグビーや英語をめいっぱい楽しむからこそ、好きになり、好きになるからこそ、上達する。そんなSIRCが生み出す好循環に、子どもたちや保護者たちは惹きつけられている
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文=高柳淳(パラサポWEB) 写真=渋谷インターナショナルラグビークラブ

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