ブルームバーグは7月7日、「ペロシの夫がアルファベット株のオプション取引で530万ドルの利益を確定」(Pelosi’s Husband Locked In $5.3 Million From Alphabet Options)と題した記事を掲載した。そこには、「下院委員会がアルファベット傘下のグーグルやアップル、アマゾンに対する反トラスト法を採決する1週間前にペロシは取引を実行した」と記されている。また、フォックスビジネスは7月2日にペロシが公開した6月の取引記録を伝えている。
いずれの記事も、ペロシの取引を下院司法委員会によるアルファベットやアマゾン、アップル、フェイスブック、マイクロソフトなどのビッグテックに対する反トラスト法の採決と結び付けて報じている。法案の一部は7月に小委員会から上程されたもので、ビッグテックの市場における影響力の制限や、企業の解体を目的にしている。
ブルームバーグのインタビューに対し、ペロシ議長の広報担当者であるDrew Hamillは、「議長は今回の取引に関与しておらず、事前に何も情報を得ていなかった」と述べている。
ポール・ペロシの取引に不正はあったのだろうか? いくつかの情報は問題がなかったことを示唆しており、彼が正規の取引で大きな成功を収めたことがわかる。
問題となっているアルファベット株の取引は、権利行使価格1200ドルのコールオプション40枚で、ペロシは下院小委員会が招集される数日前の6月18日に権利を行使した。契約に基づき、ペロシには40枚のオプションをアルファベット株4000株分に1株当たり1200ドルで転換する権利が付与された。
ペロシがオプションを行使して株式に転換した時点でアルファベット株の株価は2550ドルに上昇したため、彼が保有する株式の価値は約540万ドルに達した。
「オプション取引」を活用した錬金術
ブルームバーグの記事が触れていないのは、ペロシがこのタイミングで権利を行使する必要があったという点だ。
開示されたレポートによると、ペロシが権利を行使した2021年6月18日は、オプションの失効日だった。ペロシにはオプションを売るか行使するしか選択肢がなかったのだ。彼が何もしなかったとしても、証券会社がオプションを失効させるか行使していただろう。つまり、ペロシが6月18日に行った取引は必要に迫られて行ったものであり、下院小委員会の招集は無関係だったことがわかる。