凸版印刷と東京五輪 終わりなきダイバーシティの旅

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人を出身地・性別・言語・年齢・障がいの有無・信仰などで区別することなく、多様なバックグラウンドを受け入れる「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」へ取り組みは、企業に何をもたらすのか。

凸版印刷は、東京2020オリンピック・パラリンピックをオフィシャルパートナーとしてサポートした。創業から121年、業界のトップを走り続ける同社とこの国際イベントの関わりの裏には、「人間尊重」という凸版印刷の企業理念があるという。

「多様性と調和」を掲げたオリパラを支援して得られたものとは? スポーツ事業開発室事業推進部長の大川誠氏と、ダイバーシティ推進室長の澤田千津子氏に聞いた。

1964年大会で公式ポスターが話題に


1964年の東京五輪。今でも語り継がれるその盛り上がりに一役買ったのが、ある公式ポスターだった。過去の公式ポスターでは写真が使用されたことはなかったが、デザイナー亀倉雄策氏は陸上短距離のスタートダッシュをイメージした躍動感あふれる写真を使用。そのダイナミックな動きを美しく表現したポスターに人々は衝撃を受け、大会への期待を膨らませたという。

この“写真を使用した初の公式ポスター”を製作したのが凸版印刷。亀倉氏の意図を汲み、独自の製版技術とグラビア印刷技術を駆使して歴史に残るポスターを作り上げた。

凸版印刷はその他、チケットやプログラム、グラフ誌の製作にも携わった。閉会式前夜の競技結果を掲載した「閉会式プログラム」は日本中の話題をさらった。当時はパソコンやインターネットなどなく、データのやりとりや製作においても現在よりはるかに時間がかかった。その作業は終夜にわたり、工場からパトカー先導で国立競技場に届けられたのは閉会式開始のわずか45分前であったそうだ。

これらを可能にしたのは凸版印刷の社風にあると澤田氏は言う。

「当社にはもともと“社会的価値の創造企業”を目指すという社風があります。1964年のオリンピックのポスターは難しい仕事ではあったと思いますが、亀倉氏の『写真を使いたい』という思いや、試合の結果を『翌朝には届けたい』という関係者の気持ちを受け止めたからこそ、それを形にして提供できたんだと思います」


凸版印刷株式会社ダイバーシティ推進室長の澤田千津子氏

35年前から始まっていたダイバーシティの取り組み


東京2020大会では、コンセプトのひとつに「多様性と調和」が掲げられたが、凸版印刷では数十年前から「人間尊重」という理念のもと、さまざまな取り組みを実践している。

たとえば男女雇用機会均等法が施行された1986年には早々に大卒女性の定期採用を開始し、1992年には育児休業制度をスタートした。1993年には介護休業制度を導入、また障がい者雇用のための特例子会社、東京都プリプレス・トッパン(現・東京都チャレンジドプラストッパン)を設立した。

そして、2018年からLGBTQ(性的マイノリティ)に関する活動を開始し、2020年には同性パートナーや事実婚パートナーにも配偶者関連制度を適用するなど、「ダイバーシティ」という言葉が日本で知られる前から取り組みを始め、続けてきた。
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文=濱中香織(パラサポWEB) 写真=四十物義輝 企画協力=日本財団パラリンピックサポートセンター

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