凸版印刷と東京五輪 終わりなきダイバーシティの旅

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東京2020大会を機にサービス開発


オリンピックはこれまで数々の技術革新を生んできた。コロナ禍で迎えた東京2020大会でも、開催期間中には活用やPRの機会に恵まれなかったが、今後社会のあらゆる場面で役立っていくであろう技術サービスが開発されている。

凸版印刷でも東京2020大会を機に、ウィズコロナ、そしてSDGs時代に対応したさまざまなサービスを開発、提供している。代表的なものを3つ紹介する。

らくゆく




車いす利用者の日常を豊かにする情報をまとめたバリアフリー情報サイト。東京2020大会を目指して開発が進められ、2021年8月25日にリリースされた。先ほど紹介した東京都チャレンジドプラストッパンで働く車いすユーザーの社員による企画提案から生まれた。

実際に、車いすユーザーの社員が現地調査に赴き、多目的トイレやスロープの有無、車いすのタイヤがパンクした時に修理をしてくれるショップの位置などの情報を調査。手間と時間をかけて使いやすいサイトを作り上げた。

VoiceBiz(ボイスビズ)




日本の在留外国人の数は2010年の200万人から2020年には289万人まで、10年間で1.4倍にも増加。こうした多くの外国人を受け入れる中で問題となっているのが言葉の壁だ。各種手続きが必要な役所や銀行、日本語が得意ではない保護者に対応する学校などの施設で聞かれる「困った」の声を救済するため、凸版印刷が以前から開発していたのが法人向けの翻訳機「VoiceBiz」だった。

音声12言語、テキスト30言語に対応した多言語翻訳アプリは、東京2020大会で訪日外国人向けにブラッシュアップして活用される予定だったが、コロナ禍によってそのチャンスは少なかった。一方で、新型コロナウイルスのワクチン接種会場という想定外の場面で活用されることになり、接種時に必要な単語を追加して、無料提供するといった試みがなされた。

ecocracy(エコクラシー)




リサイクル可能な地球に優しい装飾幕「ecocracy」は東京2020大会で競技会場やイベント会場、またその周辺を華やかに盛り上げる予定だったが、ほとんどの会場で無観客開催になったため、一部の会場で試験的に使用された。

装飾幕は通常塩化ビニルとポリエステルの複合素材で出来ていて、イベントが終わると廃棄されてしまうものだが、「ecocracy」はリサイクルすることができ、使用後は再資源化され公園のベンチや植木鉢などとして生まれ変わるという。

「東京2020オリンピックのトップパートナーであるダウ・ケミカル社と共同で開発しました。以前から取り引きはありましたが、大会に向け共同でマーケティング活動をする中で、持続可能性に配慮した大会を目指し、リサイクル可能な装飾幕をつくろうと決めました」(大川氏)

凸版印刷が考える東京2020大会のレガシーとは?


凸版印刷には約2万社の取引先がある。多種多様な業種に臨機応変に対応することで蓄積されたノウハウや時代を読む力が、まさに東京2020大会のテーマでもあり、時代を反映した「多様性や調和」「持続可能性」を可能にするサービスを誕生させた。

「東京2020は、ゴールではなくひとつのスタートになった」と大川氏は言う。レガシーとなるかどうかは、この先の自分たちの行動次第だと。

澤田氏もまた、「ダイバーシティの取り組みは終わりのない旅ですね」と語った。

文=濱中香織(パラサポWEB) 写真=四十物義輝 企画協力=日本財団パラリンピックサポートセンター

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