スケートボード発祥の地・米国では、メジャースポーツなどと比べるとその人気は劣るものの、誕生当初からストリートカルチャーとして深く根付いており、若者を中心に熱狂的な支持を得ている。巨額のスポンサー契約により数億~数十億を稼ぐスーパースターも実は古くから多数輩出されてきた。
そして、これまで個人で競ってきたスケーター達が初めて自国の国旗を背負ってオリンピックの舞台に立つという6年前までは夢にも思っていなかった現実に、大会前から選手もファンも興奮していた。
こうしてオリンピックの新種目として歓迎されたスケートボード発展の背景には、「SLS」というプロリーグを創設し、国際的なツアーに育て上げた元プロスケーターの存在がある。
野球に例えて言うなれば、「独立リーグの一人の元野球選手が、メジャーリーグを創設して、それがオリンピック種目の正式ルールに採用された」といったところだ──。
金メダル・堀米選手のブレイクのきっかけにもなった「SLS」とは?
今回のオリンピックでは、「Street League Skateboarding(SLS)」というリーグと同一のルールが採用された。スケートボードが正式種目に決定した後、2018年にIOC関連組織と業務提携を結び、東京オリンピック予選大会としても機能した。
SLSは2010年のリーグ創設以来、ナイキとの冠スポンサー契約、Fox Sports 1との放映権契約など順調に規模を拡大させ、フォーブスによると2015年にはソーシャルファンベースが350万人にまで到達している。
SLSはストリート型スケートボード競技初の国際的プロリーグだ。毎年、北南米・ヨーロッパの各地を巡るワールドツアーが開催され、各大会の総合順位上位者が決勝大会に進み、その決勝大会の成績でシーズンの優勝者が決まる仕組みだ。各大会の優勝賞金は10万ドル(約1100万円)で、シーズンを通した入賞賞金は総額100万ドル(約1億1000万円)を超える。
また、大会賞金とは別に、各選手が企業とのスポンサー契約を獲得するショーケースの舞台としての性質も忘れてはならない。東京オリンピックで金メダルに輝いた堀米選手も、それまで日本国内の大会での優勝経験はあったものの、世界的認知度が高まったのは2017年にSLSの大会で3位入賞を果たしたことが大きい。
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