サーキュラーエコノミーへの融資についても、サーキュラリティに関する客観的で測定可能な評価指標が開発されれば、同様のモデルは提供可能だろう。
サステナビリティとイノベーションの交差点
上記のように、常に業界に先駆けて新しい取り組みを進めているINGだが、一般的に保守的なイメージが強い金融業界において、なぜ同社はサーキュラーエコノミーという新たな変化に素早く対応し、挑戦し続けることができているのだろうか。Joost氏に尋ねると、こう返ってきた。
「サーキュラーエコノミーの素晴らしい部分の一つは、それがサステナビリティとイノベーションのインターセクション(交差点)であるという点です。そしてそれら2つはINGにとってとても重要な要素なのです。これは、徐々に話題になりはじめたここ数年で培われたものではありません。INGは20年以上にわたり、サステナビリティの分野で積極的に活動してきました。
私たちは2014、15年からサーキュラーエコノミーに取り組んでおり、シンクタンクのCircle Economyの会員にもなり、サーキュラーエコノミーらに積極的に取り組んでいる企業や政府、学術界のネットワーク、CE100にも参画しています。これらは他社がサーキュラーエコノミーにどのように取り組んでいるかを学ぶとてもよい手段となっており、我々はそこで学んだことを自社にも取り入れてきました」
外部のサーキュラーエコノミー推進機関とも密に連携しながらインプットを行い、自社への適用を進めていく。その成果の表れの一つともいえるのが、同社が展開する「Orange Circle Programme」だ。同プログラムでは、社内外を含めたサーキュラーエコノミーに関する知識共有に加え、ING自体のサーキュラー調達にも取り組んでいるほか、サーキュラーエコノミーに関わる企業の合併やIPO案件、循環型ビジネスモデルへの移行を支援する取引に注力しており、ING全体として多角的にサーキュラーエコノミーを推進するドライバーとなっている。
日本の金融業界はどこから始めるべきか?
最後に、日本の金融業界はこの変化に対応するべく何から取り組み始めればよいのかを訊いてみた。
「まずは、サーキュラーエコノミーについてより多くの知識を身につけることですね。サーキュラーエコノミーとは何なのかが分かったら、次は顧客のもとを訪ね、彼らがビジネスモデルを移行するにあたって何が必要なのかを理解しましょう。そして、複数の顧客と話すことが大事です。
なぜなら、彼らは恐らく一社でサーキュラーな解決策を模索しているわけではなく、彼らのパートナーと協働しているからです。バリューチェーン全体をしっかりと見て、そのうえで彼らの課題を解決できる金融ソリューションを開発しましょう。顧客にはそれぞれ異なる資金ニーズがありますので、それらを理解することが重要です。理解したら、あとは実行するのみです」
サーキュラーエコノミーは、銀行をはじめとする金融業界全体に対しても大きな変革を迫っている。そのことにいち早く気づき、顧客企業や消費者のニーズに答えられる金融商品を開発できた金融機関は、新たな経済パラダイムにおける勝者となるだろう。
資産ではなくサービスに融資する。過去の財務状況ではなく将来キャッシュフローを評価する。単一企業ではなくバリューチェン全体を見て、パートナーシップに融資する。サーキュラリティをどのように測定するか。これらは全てが新しい領域であり、まだ理論も発展途上だ。だからこそ、そこには大きなチャンスがある。
【参照サイト】ING Group
【参照サイト】ING Circular Economy
【参照レポート】Rethinking finance in a circular economy
【参照レポート】Circular Economy Finance Guideline
【参照レポート】Accenture “無駄を富に変える”
この記事は、2020年2月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。(上記の記事はハーチの「IDEAS FOR GOOD」に掲載された記事を転載したものです)
連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
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