金融業界においてサーキュラーエコノミーに関する共通理解を醸成し、サーキュラー思考を浸透させる目的で作られた同ガイドラインは、「Use of Investments(投資の活用)」「Process for Project Evaluation and Selection(プロジェクト評価と選定のプロセス)」「Management of Investments(投資マネジメント)」「Reporting(報告)」という4分野で構成されている。
投資の活用においては、サーキュラーエコノミー事業に投資するうえではビジネスモデル評価とインパクト評価の両方が重要だとしたうえで、対象となる代表的なビジネスモデルやインパクト評価の手順を紹介している。
Joost氏は、ガイドラインを策定した背景についてこう語る。
「ガイドラインを策定する前は、そもそも何がサーキュラーエコノミーなのか、サーキュラーエコノミーに融資するとはどのような意味なのか、という点についての共通理解がありませんでした。しかし、パートナーシップに対して融資をするうえでは、一つのサーキュラーエコノミープロジェクトに複数の金融機関が関わることもあるため、共通言語を話すことが非常に重要でした。
例えば、全ての人々がシェアリングエコノミーのプラットフォームが、サーキュラーエコノミーの重要な一部であるということを理解しているわけではありません。ガイドラインは共通理解を生むためのスタート地点であり、当社の場合はこれをベースとして社内用に事業のサーキュラリティを評価するスコアカードを作成しました。
しかし、我々は次のステップに進む必要もあると考えています。第一段階として共通理解というベースラインを作ったので、次はそれをどのように測定していくか、という点が重要なトピックとなります。企業や取引ごとのサーキュラリティをどう測定するか。それが現在我々の取り組んでいるところです。
すでにWBCSDやエレンマッカーサー財団など、いくつかのイニシアチブがサーキュラリティを測定するメトリクスの開発に取り組んでいます。これらはまだ途上ではありますが、いずれ我々が融資をする際に非常に役立つものになるでしょう」
欧州では、サーキュラーエコノミーとは何か、という「What」の議論だけではなく、サーキュラリティをどのように測定するかという「How」の議論も進んでいる。明確なメトリクスが生まれることで、銀行は顧客の収益性だけではなくサーキュラリティも定量的にモニタリングできるようになり、リスク評価や利率設定などにも活かせるようになる。
実際に、INGはすでに顧客のサステナビリティパフォーマンスに利子を連動させる「Sustainability Linked Loan(サステナビリティ連動型ローン)」を2017年から提供しており、すでに60程度の企業に対して融資を行っている。
これは、当初は外部のESG評価機関によるスコアをベースとしてサステナビリティパフォーマンスの改善目標を設定し、目標を達成すれば利子率のディスカウントが受けることができ、達成できなかった場合はプレミアムを支払うといった形式のローンだ。同ローンの最初の顧客はフィリップス社だ。
しかし、新しいバージョンではCO2排出量など会社個別のKPIに連動した利子設定ができるローンの提供も開始しており、会社のサステナビリティパフォーマンス向上が財務パフォーマンス向上に直接的につながる仕組みを提供している。