「ごみ」を資産に変える? サーキュラー・エコノミー世界の動向

サーキュラー・エコノミーの構築を(Photo by Unsplash)

新型コロナウイルス感染拡大に対する防御策として、湾岸協力理事会(GCC)に加盟するほとんどの都市が完全または部分的なロックダウンの措置を講じました。経済活動には深刻な影響が及んでいるものの、デジタルチャネルの活発化によって、政府や企業はリモートでの業務が可能になりました。

電子政府や電子商取引、ごく最近ではフィンテックにおける著しい発展により、いつかの先進的な都市インフラが出現しています。

アブダビ、ドーハ、ドバイ、クウェート市、マナマ、リヤド、シャルジャは、都市がどのようにして自己改革を継続するか、また、環境的に持続可能なプロジェクトをどのようにして戦略計画の中心に据えるかを体現しています。

ところが、生活の質の向上と経済活動の活発化は、望ましくない結果ももたらしています。都市廃棄物です。ロックダウンの実施中、地方自治体の廃棄物の量は一時的に減少したかもしれませんが、医療廃棄物は大幅に増加しました。

では、廃棄物は、湾岸都市の経済的なメリットとなり得るのでしょうか。それとも、新たな経済刺激策が、パンデミック(世界的大流行)の影響をうけた市場の回復を促すのでしょうか?

線形モデルからサーキュラー・エコノミーへ


現在の産業と消費のモデルは、「採取するーつくるー使うー廃棄する」という、「線形モデル」として最もよく知られているプロセスをベースとしています。この一方向的な生産経路は、産業革命以来、世界で優勢な位置を占めてきました。

しかし、国連が指摘するように、世界人口が2050年に96億人に達した場合、この消費パターンを維持するには地球が3つも必要になってしまいます。線形モデルは、原材料の供給を圧迫し、商品価格の上昇と、変動を招く原因となっています。このため、線形モデルを再考し、「サーキュラー・エコノミー」として知られる「採取するーつくるー使うーリサイクルする」モデルに置き換える必要性が高まっています。

都市はいまや世界経済の成長エンジンに、そして、廃棄物の最大の排出主体になっています。

世界経済フォーラムの「都市のサーキュラー・エコノミー」に関する白書は、2050年までに世界人口の70%以上が都市に居住し、世界のGDPの80%超を産出するとともに、年間13億トンを上回る固形廃棄物を排出するようになると予測しています。経済協力開発機構(OECD)は、現時点ですら、世界の廃棄物の50%は都市で発生していると推定しています。

したがって、都市は、廃棄物の発生を低減する対策を早急に講じなければなりません。廃棄物を資産に転換し、循環型のエコシステムを積極的に構築してビジネスチャンスを広げることができれば、一層望ましいといえます。

廃棄物にビジネスチャンス


GCCの高所得都市では、一人当たりの廃棄物が増加し続けています。国連環境計画(UNEP)の昨年の試算によると、GCCの地方自治体における固形廃棄物の量は、2016年末時点で年間およそ2700万トン。前年に比べて最大5%増加したとみられます。これらの都市では毎年、廃棄物管理に莫大な予算を充当しています。また、埋め立て地という形の環境対策コストが発生し、このコストは増加し続けています。

前述のUNEPの調査は、高所得と廃棄物発生量の多さに強い相関関係があることを示唆しています。調査では、西アジア地域の年間の廃棄物管理コストが36億ドル前後にのぼると推定。この地域で埋め立てられた廃棄物の85%を転用する統合システムには、年間78億6000万ドルものコストが発生し、これが生み出す市場機会は各年最大で47億ドルとみられます。
次ページ > 中東で進むプロジェクト

文=Ali Adnan Ibrahim, Global Head, Social & Sustainable Finance, Al Baraka Banking Group

ForbesBrandVoice

人気記事