そんな新時代において、「博報堂買物研究所」は企業の「売る」を生活者の「買う」から考え、「買物」の構造・実態を多角的に洞察、ショッパーマーケティング・ソリューションを提供しようとしているという。同研究所所長の山本泰士氏に、「風の時代」に何が売れるのかについて、前編、後編に分けて寄稿いただいた。
前編では「戦後買物史」をひもとき、風の時代には「信じられる買い物」が求められる、と解いた。本後編ではいよいよ、「では、実際何が売れるのか?」を考える。
前編:『「風の時代」に何が売れるか? 博報堂買物研究所に聞いてみた』
衣:ハイパーパーソナライゼーションへ
まず「衣」、ファッションやコスメの分野。ここで「信じられる」価値をつくるもの、それはハイパーパーソナライゼーションという「超・個人化」の流れだろう。これまでもスマホで体型を測定し、自分の体のサイズにぴったり合う服が届くサービスなどは存在していた。その流れをより個人の趣味・嗜好まで昇華したファッション・コスメサービス・プロダクトが次々と生まれ、売れていく。
例えば、今年すべてオンライン開催となったイノベーション見本市「CES2021」で欧州系コスメブランドが出品していたのが、自分向けのリップをその場で調合してくれるプロダクトだ。
スマートフォンの専用アプリで顔写真を撮影すると服装や髪色などに合わせた「私にとって似合う」色味を自動で調合し、筒状の機械から生み出してくれる。「今年の新色」「トレンドカラー」でなんとなく選ぶのではなく「いまの私がどう綺麗になれるのか?」という意思に寄り添い、好み診断やデータ分析を背景にオンリーワンな色を提案してくれる。
この「超・個人化」は多くの中から自分に合った色を選ぶストレスがなく、心地よい。しかも、「私のためだけの色」が生み出される喜びに満ちているのだ。
同様に、このコロナ禍でオンラインを活用したスタイリストサービスも普及し始めた。プロのスタイリストが自分の服の好みを聞きながらオンラインで手軽に、体型や肌色も見ながら、似合う色やデザインの服をおすすめしてくれる。