「ごみ」を資産に変える? サーキュラー・エコノミー世界の動向

サーキュラー・エコノミーの構築を(Photo by Unsplash)


アブダビのタドウィア廃棄物管理センターでは、オンラインで廃棄物資材のリサイクルのオークションを始めています。

5)輸入品と廃棄物に料金制を導入

消費財と輸入品は、その魅力的な価格設定により数多く販売されていますが、これらが廃棄物管理予算に課す負担は見落とされています。寿命がより短い製品は、廃棄物管理システムに過度な負担をかけます。この不均衡を是正するには、いくつかの財政政策による調整と、社会的行動の変化が必要になるでしょう。

GCCの各都市は、廃棄物管理の年間コストを基に料金戦略を策定し、段階的に料金制度を導入できるかもしれません。UNEPはGCC諸国の場合、住民一人当たりの廃棄物管理コストを31ドル前後と試算しています。GCCの各都市に最適な料金制度をつくる際には、この数値がベースラインになるかもしれません。

料金および手数料の導入とともに、廃棄物回収料や廃棄物発生税を設けることもまた、個人と企業の行動モデルの形成に効果を発揮します。ワシントンDCでは、使い捨ての買い物袋を有料化(5セント)したところ、その利用が60%減少しました。

サンフランシスコは、排出された廃棄物に基づいて企業に手数料を負担させており、分別収集タイプのごみ箱を使用した場合には、割引を提供。トリノでは、廃棄物を投棄したり、適切に分別しなかったりした企業に対し、罰金を科しています。

トロント
トロントのリサイクルボックス(GettyImages)

税制上の優遇措置の事例では、上海がリサイクル企業に対してVAT(増値税)の減税を付与しているほか、クリーブランドとシンシナティでは、グリーン認定された建設プロジェクトに対して100%の減税を与えています。このほか、ミラノは食品廃棄物を寄贈した企業に対して廃棄物税を20%減税。OECD諸国の大部分では、家庭ごみの収集料と廃棄物処理税が導入されています。

データに基づいた廃棄物料金制においては、世界的な趨勢であり、廃棄物の管理コスト削減を目標とする必要があります。アブダビは「ナダファ・プログラム」という名称の廃棄物料金制を導入。その収入は、あらゆる種類の廃棄物の搬入車両をすべて追跡、監視する統合廃棄物管理システムに充てられています。また、バーレーンでは、無許可の廃棄物投棄に罰金を科しています。

廃棄物を最小限に抑えるもうひとつの方法は、拡大生産者責任と呼ばれる考え方を活用することでしょう。これは、製品のライフサイクル全体に関わるすべての環境コストを、その市場価格に適用するというものです。

GCCの各都市がこれを共同で適用することができれば、都市ごとの場合よりも市場が大きいことから、生産者が革新的製品を開発しやすくなり、このアプローチの効果が高まると思われます。フランスでは既に、製造業者に対し、埋め立てごみの転用手段としてより調整しやすい製品を設計するように求めています。

このほか、サーキュラー・エコノミーに合致する商品には特恵的な料金制を導入することを検討し、非循環型の商品が次第に高価なものになるようにする必要もあります。

6)循環型金融の主流化

各政府は、こうした統合戦略を実行するための政策手段を打ち出す必要があります。こうした政策枠組みが整った後には、市場ベースの融資メカニズムが出現するとでしょう。

ブレンドファイナンスはそうした政策手段の候補のひとつ。プロジェクトのバンカビリティ(融資適格性)を高め、民間投資の利用を促すものです。この目的のために、GCCの地域開発金融機関が信用補完と強化のプログラムを調整し、サーキュラー・エコノミープロジェクトに対する銀行融資の利用を促進できるかもしれません。
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文=Ali Adnan Ibrahim, Global Head, Social & Sustainable Finance, Al Baraka Banking Group

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