「ごみ」を資産に変える? サーキュラー・エコノミー世界の動向

サーキュラー・エコノミーの構築を(Photo by Unsplash)


一方、世界政府サミットのレポートでは、サーキュラー・エコノミーの導入によってGCC諸国が2030年までに節減できる金額を1380億ドルと見積もっています。世界的にみると、明確に区分される廃棄物の4つのカテゴリー、つまり、廃棄された生産力、廃棄されたライフサイクル、廃棄された内在的な価値、廃棄された資源に注力することで生まれるビジネスチャンスは、なお4兆5000億ドルを上回っています。

エコ
廃棄物の4カテゴリー(イメージ: The Circular Economy Handbook: Realizing the Circular Advantage, Palgrave Macmillan, 2020, Figure 2.1, p17)

各国のリサイクルプロジェクト


GCCの各都市では、これまでに廃棄物管理インフラの改善に多額の投資を行っています。GCCの全域で廃棄物発電プロジェクトが展開されており、リサイクル工場では、統合的な廃棄物管理の技術を用いた、再利用目的の廃棄物の分別が始まっています。

アブダビでは現在、無害な廃棄物の28%をリサイクルし、6%を堆肥化しています。また、ドバイの「スマート・サステナビリティ・オアシス」リサイクルプロジェクトでは、家庭ごみを18種類に分別。シャルジャの廃棄物管理会社Bee’ahは、埋め立てごみの転用率が76%とGCCで最も高く、同社は2021年までにこれを100%にする目標を掲げています。

また、アルミニウム・バーレーン(Alba)は、オーストラリア企業との提携のもと、2021年に有害廃棄物の処理を開始し、建設や鉄鋼業界向け原材料に転換する予定です。バーレーンでは、廃棄物を発電に変換するエネルギープラントの入札も進められています。このほか、サウジアラビアとUAEではリサイクル資材を使ったエコパークの開発が進行中。サウジアラビアでは、サーキュラー・エコノミーに関する国家戦略が最終段階を迎えています。

廃棄物を資産に変える、6つの戦略と取り組み


これらのイニシアティブが目指している方向性は、いずれも正しいと思われます。では、サーキュラー・エコノミーの一環として廃棄物を資産に変える道のりで、GCCの各都市は、さらにどのような取り組みを行うことができるのでしょうか。

以下に、可能性のある6つの戦略をご紹介します。

1)「循環志向の起業家100人」戦略

GCCの各都市には、統合的な循環型エコシステムを構築する理想的な態勢が整っています。このエコシステムでは、循環志向の起業家が中心になる必要があります。各都市は、例えば、サーキュラー・エコノミーの隙間領域において、5年以内に循環志向の起業家100人を育成する、といった目標を自ら課すことが必要です。

GCCに統合的なビジネス・エコシステムが構築されれば、これら循環志向の起業家が地域内で連携することができます。循環志向の新しいビジネスが既にいくつか誕生しており、これらのビジネス間で連携が進めば、雪だるま式の効果が生まれる可能性が高いでしょう。

Dグレードは、リサイクルされたプラスチックを使って速乾性のTシャツと布バッグを作っています。ハンドインダストリーズは使用済みの布を、またウェストコーストグループではペットボトルを、それぞれリサイクルしています。このほか、クラウンインダストリーズではプラスチックと金属を、クレセント石油では有害廃棄物をリサイクル。ファルコンパックとナビールパフュームグループでは、生分解性のリサイクル資材を使用しています。

廃棄物ゼロまたは低炭素排出を標榜する都市は、循環志向の起業家の成功を重要な目標として優先させるべきです。
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文=Ali Adnan Ibrahim, Global Head, Social & Sustainable Finance, Al Baraka Banking Group

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