スモール・ジャイアンツの街、大阪府八尾市を中心に12月に開かれた5市合同オープンファクトリー「FactorISM(ファクトリズム)2020」に参加してきた。イベントの副題には「アトツギたちの文化祭」とある。つまり、先代から事業承継されたアトツギ社長たちが中心となって、行政と連携して、一般の人たちに向けて五感で体感できるように地場の企業が工場(こうば)を同時開放したというのだ。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実際の工場見学は地元の人たちを中心に、ツアーは中止に。代わりに工場見学はオンライン配信した。
合言葉は「こうばは街のエンターテイメント」「モノタメを止めるな!」という。Forbes JAPANはこの「ファクトリズム」のルポをお届けすることになったが、現場に到着するまでなかなか全容が掴みにくかった。事前の下調べは最低限に、出たところ勝負で取材することになった。
「変態公務員」松尾の案内で向かった先は
早朝の新幹線に飛び乗り、関西へ。八尾市の久宝寺駅に到着すると、自他ともに認める「変態公務員」こと八尾市経済環境部産業政策課の松尾泰貴係長の案内で、さっそく最初の工場へ向かった。松尾は、ファクトリズムのTシャツにジーンズ、大きなイヤホンとカメラを片手に、万全の中継スタイル。市職員というより、テレビマンさながらの格好だ。
到着した先には、やけに明るいピンク色のテント幕を纏った工場が見えた。看板には「コダマガラス」と大きな文字で書かれている。入り口の「ファクトリズム」と片仮名で書かれたイベントの提灯が風になびいていた。
受付では従業員が迎えてくれた。感染症と安全対策のため、入る前に、体温チェックをした後、手袋を二重にしてヘルメット、ゴーグルを渡された。それらを装着するやいなや、明るい声が響いた。
「では、中継始めまーす。こちらはコダマガラスさんに来ています」
すぐに松尾によるオンライン工場見学の中継が始まった。工場の中に入ると、高い天井で開放的。そこに所狭しと切り出される前の大判のガラスが横たわっていた。「カッターでガラスを切る体験をしたい人?」従業員から提案され、参加者たちが挑戦することに。
コダマガラスの工場内
定規に沿って一枚板のガラスをカッターでなぞるようにスーッと切り込みを入れ、軍手をつけた社員が上から押すと、ガラスがパリッと鈍い音を立てて綺麗に割れた。思えば、ボールなどがガラスに当たって割れる音は聞いたことがあるが、切り出されて割れる瞬間は見たことがない。
磨き加工では大判のガラスを一人で持つ従業員もいて驚いた。もちろん数名で持った方が安全だが、熟練の技があるからこそだ。
ガラスを研磨する作業