【ウィルソン氏おすすめの日本漫画8つ】
会社員も、主婦も、無職も。現代女性のリアルな生き方を知る
雁須磨子『あした死ぬには、』1~2巻(「Ohta Web Comic」にて連載中、太田出版)
“すごい漫画だと思います”(ウィルソン氏)。主人公は映画配給会社で激務に忙殺される40代独身の多子(さわこ)。さらに、子どもがいるパート主婦の塔子、無職で実家暮らしの鳴神など、40代女性の体と気持ちの変化をていねいに描く。女性読者は自分と似た状況の女性だけでなく、違う状況に置かれた女性にも自然と心を寄せ、男性読者は現代に生きる女性たちの実情とその内面を、楽しみながら体感できるだろう。また、「まさにこういう人から迷惑をこうむっている!」という女性読者の声を集めるキャラクター「バブル世代」の男性会社員・梅木の言動にも注目を。
相手の全てを理解できなくても一緒にいる、ということ
高松美咲『スキップとローファー』1~4巻(「アフタヌーン」にて連載中、講談社)
“面白いキャラクター達です”(ウィルソン氏)。「官僚になる」という野望を抱き、石川県の小さな町から東京の進学校へやってきた岩倉美津未(みつみ)。最初は「いなかモンの妙ちきりん」という印象を持つ者もいるが、その誠実さと前向きさでクラスメイトたちの信頼を得ていく。学年屈指のイケメン・志摩くん、「あからさまな美人」の村重さん、真面目でネガティブ思考の久留米さんら様々なキャラクターが登場。そんな一見違うタイプの人同士がお互いを遠ざけることなく理解しようとし、時に完全には理解できなくても一緒にいることを選択する姿に、何度も胸を打たれる。
あの時だけの、輝ける日々を味わう
ねむようこ『とりあえず地球が滅びる前に』(全4巻、小学館)
“活発で楽しいですね”(ウィルソン氏)。「フツーレベルの進学校の フツーレベルのバスケ部」に所属する、高校2年生の寅子は、気の合う仲間たちとゆるく楽しく部活動をすることが喜びだった。だがある日、イケメンの「神」が現れ、バスケ部が県大会で優勝しないと「地球が滅びる」と告げ......。SF的な設定は深追いされておらず、言いたいことを言い合い、部活帰りにみんなで缶入りの「コンポタ」(コーンポタージュ)を飲む、といった高校生たちの日常風景に紙幅が割かれている。だがそれこそがその時だけの輝ける日々だと知っている大人読者には、すべてがまぶしく映る。
自立した「個」が集まり、居場所を作る
オノ・ナツメ『さらい屋五葉』(全8巻、小学館)
“物語もイラストも素敵です”(ウィルソン氏)。剣の腕はたつが気弱な性格の貧乏武士・政之助は謎めいた遊び人風の男・弥一に巻き込まれる形で、誘拐を仕事にする賊「五葉」の仲間となる。鋭利な刀で刻んだような無駄を排した線が作り上げる静謐な世界に、政之助と周囲の人とのあたたかな交流が色を添える。ベタベタした仲間意識ではなく、あくまで自立した「個」が集まっているという絶妙な距離感が描かれ、だからこそそれぞれが五葉という居場所を大切に思っているのだ、という描かれ方にぐっとくる。