もともと「全日本仮囲いアートミュージアム」と銘打って、全国の建設現場の仮囲いをアート作品で彩ってきた彼らが、その展示作品の付加価値をさらに生み出すために、アップサイクルの手法を取り入れ、新たな取り組みを始めている。
その名も「アップサイクルアートミュージアム」だ。12月2日まで、JR東京駅のグランルーフ地下1階通路で色鮮やかなアート作品を展示している。駅での展示期間が終わると、その作品は洗浄された後、トートバッグへと生まれ変わるのだ。現地でQRコードをかざすと、鑑賞しながら購入できるほか、オンライン販売も行う。
トートバッグの素材は、ポリエステル製の布を軟質の合成樹脂で挟んだビニール「ターポリン」を採用。持ち手は天然皮革だ。バッグは全9種類で、東京駅丸の内駅舎のマークが刻印された本企画限定のもの。27500円(税込)で2021年3月以降、順次発送される。
駅 x アート作品の相性は抜群
今回の取り組みは、ヘラルボニーとともに、東京駅の商業施設開発や空間プロデュースを行う「鉄道会館」、ベンチャー企業に対して出資や協業を推進する「JR東日本スタートアップ」がタッグを組み、実現した。
鉄道会館社長の平野邦彦(左)とJR東日本スタートアップ社長柴田裕 =編集部撮影
これまでも、JR東日本スタートアップ社長の柴田裕とともに、吉祥寺駅で地域の障害のある人たちのアートで彩るラッピングなどを手がけてきた。今年8月には高輪ゲートウェイ駅で仮囲いアートの展示を行ったが、鉄道会館の社長平野邦彦が、この展示をたまたま見かけてすぐに柴田に声をかけたという。平野はこんな思いを口にした。
「高輪ゲートウェイ駅に家族で行った時、綺麗なものがあったので近寄ってみたんです。そこでこのプロジェクトが障がい者の支援にもなることを知り、提案しました。綺麗に仕上がってますし、温かく、非常に良い空間になったかなと思います。東京駅は東京から地方へ、地方から東京へ、とあらゆる方がクロスする場所です。そんな場所にふさわしいプロジェクトだと思います」
JR東日本スタートアップの柴田も熱っぽくこう語った。
「駅と鉄道 x アートって、実はめちゃくちゃ相性が良いと思っています。人が行き交う東京駅が彩られ、ここまできたかというのが感想です。障がいが障がいでない世界を東京駅から発信し、新しい社会が生まれることを願っています」
ところで、このアート、何がすごいのだろうか。
ヘラルボニーは、全国20以上の福祉施設の障がいをもつ人たちのアート作品2000点以上とライセンス契約を結び、商品化などの二次利用を行っている。