そんなフレーズとともに、「障害者」の三文字が書かれたポスターが、金色のフレームから落ちかけた下部だけシュレッダーにかけられたように細断されている。
これは、障害のあるアーティストによるアート作品のブランド化などを手掛け、福祉のカルチャー化を展開する株式会社「ヘラルボニー」が2月21日から、ブランドとして初めて展開する意見広告だ。SNS上でも「#障害者という言葉」というハッシュタグで、議論のきっかけをつくるつもりだ。
なぜ「障害者」という言葉が、一番の障害なのだろう? 初めはそう思うかもしれない。だが、その背景を辿ったら、あなたは何を思い、どう感じるだろうか。
「#障害者という言葉」の意見広告(ヘラルボニー提供、撮影:鈴木渉)
海外メディアも注目、安倍首相の「シュレッダー発言」
2019年12月3日、こんなニュースが駆け巡った。
内閣府が首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄した問題について、安倍晋三首相が参院本会議の場で、名簿を廃棄した人物は「障害者雇用の職員で短時間勤務だった」と答弁した。これが「配慮を欠いた発言」だとして、国内外のメディアが取り上げたのだ。
このニュースを知ったヘラルボニー代表の松田崇弥は、ツイッターでこう呟いた。「皮肉なことに、安倍首相の発言日12月3日は、障害に対する理解を促すはずの『国際障害者デー』。日本の『障害』に対する姿勢を象徴していて悲しいね」
皮肉なことに、安倍首相の発言日12月3日は、 障害に対する理解を促すはずの「国際障害者デー」。日本の「障害」に対する姿勢を象徴していて悲しいね。#松田弟
— 松田崇弥・文登(双子)福祉実験ユニット「ヘラルボニー」 (@heralbony_twins) December 4, 2019
「障害者職員」理由にするのは「最低最悪の言い訳」?シュレッダー問題、安倍首相答弁に批判も https://t.co/axvLJ9ghX1 @jcast_news
すると、双子の兄で副代表の松田文登も同じタイミングで、「『障害』があったからと言わんばかりの回答。一国の主が発言するにはあまりにも軽率な言動で憤りを感じる」と、双子が共同で運営するアカウントでツイートしていたのだ。
「障害」があったからと言わんばかりの回答。一国の主が発言するにはあまりにも軽率な言動で通り越して憤りです。
— 松田崇弥・文登(双子)福祉実験ユニット「ヘラルボニー」 (@heralbony_twins) December 4, 2019
担当職員の障害は資料廃棄の根本的な問題とは関係ないです。#松田兄
安倍首相、名簿のシュレッダー処理「担当は障害者雇用の職員」と答弁 批判相次ぐhttps://t.co/X3JHXuaE8O
怒りや悲しみ、やるせなさ……。2人のツイートからは、率直な思いが感じられる。松田崇弥は「自分自身は怒りというより、(首相の発言は)国としての見解、日本政府のスタンスを示したのだと、客観視したような感覚がありました。今も世の中にある、障害者=欠落した者を指すイメージや価値観が改めて注目されるきっかけでした」と振り返る。
彼らのツイートを見た広告業界の知人から「ヘラルボニーとしてアクションした方が良いのでは」と連絡があり、松田兄弟を中心に、ブランドとしてどう行動に移すべきかを考え始めた。