経済・社会

2020.02.21 12:20

この国の障害は #障害者という言葉 だ。ヘラルボニーが異例の意見広告に込めた痛烈なユーモア

ヘラルボニーの戦略法務小野田峻、代表松田崇弥、ストラテジックプランナー西野彩紀(左から順)

ヘラルボニーの戦略法務小野田峻、代表松田崇弥、ストラテジックプランナー西野彩紀(左から順)

「この国のいちばんの障害は、『障害者』という言葉だ。」

そんなフレーズとともに、「障害者」の三文字が書かれたポスターが、金色のフレームから落ちかけた下部だけシュレッダーにかけられたように細断されている。

これは、障害のあるアーティストによるアート作品のブランド化などを手掛け、福祉のカルチャー化を展開する株式会社「ヘラルボニー」が2月21日から、ブランドとして初めて展開する意見広告だ。SNS上でも「#障害者という言葉」というハッシュタグで、議論のきっかけをつくるつもりだ。

なぜ「障害者」という言葉が、一番の障害なのだろう? 初めはそう思うかもしれない。だが、その背景を辿ったら、あなたは何を思い、どう感じるだろうか。

ヘラルボニーの意見広告「障害者という言葉」
「#障害者という言葉」の意見広告(ヘラルボニー提供、撮影:鈴木渉)

海外メディアも注目、安倍首相の「シュレッダー発言」


2019年12月3日、こんなニュースが駆け巡った。

内閣府が首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄した問題について、安倍晋三首相が参院本会議の場で、名簿を廃棄した人物は「障害者雇用の職員で短時間勤務だった」と答弁した。これが「配慮を欠いた発言」だとして、国内外のメディアが取り上げたのだ。

このニュースを知ったヘラルボニー代表の松田崇弥は、ツイッターでこう呟いた。「皮肉なことに、安倍首相の発言日12月3日は、障害に対する理解を促すはずの『国際障害者デー』。日本の『障害』に対する姿勢を象徴していて悲しいね」


すると、双子の兄で副代表の松田文登も同じタイミングで、「『障害』があったからと言わんばかりの回答。一国の主が発言するにはあまりにも軽率な言動で憤りを感じる」と、双子が共同で運営するアカウントでツイートしていたのだ。


怒りや悲しみ、やるせなさ……。2人のツイートからは、率直な思いが感じられる。松田崇弥は「自分自身は怒りというより、(首相の発言は)国としての見解、日本政府のスタンスを示したのだと、客観視したような感覚がありました。今も世の中にある、障害者=欠落した者を指すイメージや価値観が改めて注目されるきっかけでした」と振り返る。

彼らのツイートを見た広告業界の知人から「ヘラルボニーとしてアクションした方が良いのでは」と連絡があり、松田兄弟を中心に、ブランドとしてどう行動に移すべきかを考え始めた。
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文=督あかり 写真=平山尚人

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