リモート時代の教育は「ぬまっち」に聞け。生徒が全集中する授業のつくり方

沼田晶弘

ビジネス界からもそのメソッドが注目を集める小学校教諭がいる。東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田晶弘だ。「ぬまっち」の愛称で親しまれ、子どもの自主性を引き出すユニークな参加型学習を次々と生み出している。

その沼田がコロナのリモート授業を経て見出した、ウィズコロナ時代の教育のあり方とは──。


──コロナによる緊急事態宣言によって、授業のあり方は変わりましたか。

うちの学校は、4月は完全休み。5月からリモート授業が始まって、6月から分散登校になりました。7月からは、全員がフルで通学する通常通りのスタイルに戻っています。

リモート授業をやってみて感じたのは、時間的にも内容的にも、まだまだ改善できる点がたくさんあると気づいたことです。つまり、学校でしかできないことと家でもできること、教師にしかできないことと外注できること、これらが全てわかったんです。

たとえば、このリモート授業の期間中、先生たちは必死にオリジナルの授業動画を作りました。でも、僕たちがどんなに頑張ったって、NHK for Schoolが配信する動画のクオリティには敵わないんですよ。動画や絵、画像なんかは、プロが作ったものの方が良いんです。

じゃあ、僕たち担任の先生に求められることは何なのか。それは、ほっこり感なんですね。いわば、「うちのカレー」みたいな。一方、NHK for Schoolは「ホテルのカレー」です。ホテルのカレーの方がクオリティは高いけど、お父さんやお母さんが作るカレーの方が馴染みがあって安心するじゃないですか。あれと一緒です。

そうすると、これからは「Uber Eats 経営」の時代だなって。つまり、ホテルのカレーをデリバリーして、うちで家族で食べてほっこりする。食べ物はどんどん外注するんです。僕らが慣れない動画編集に労力をつかうよりもよっぽど良いと思いませんか。

それに、学校はもっと「深める場」にシフトチェンジすると思うんです。今まではドリルを学校で解いていたけど、それは家でもできる。解くのを待つ時間はいらないなと思いました。その代わり、生徒たちが集まってディスカッションする時間や考えを深める時間という役割の方が、学校には求められるんじゃないかな。

──コロナで授業がオンラインになったことで、先生たちは、より工夫を凝らさないといけなくなりました。コロナはぬまっち先生の独創的な教育メソッドが広く浸透するきっかけになりましたか。

そもそも、僕がやっていることを浸透させたいとか、世に広めたいとは思っていなくて。あくまで、僕と子供たちのストーリーを1つの事例として公開しているというスタンスが前提なんですが、参考にしてくれる先生は結構いるんですよ。ツイッターではオリジナル問題を紹介しているので、それを授業で使ってくれる先生もいます。

良いなと思ってもらえたら、どんどん真似してほしい。でも、最近は自分のオリジナルだと言って二次利用する人もいるんですよね。真似するときは、「ぬまっちのこれ、真似しました!」って言ってくれたら嬉しいです。そしたら、僕がそれにのっかって、ツイッターで絡みにいけるから(笑)。


(写真:林ユバ)
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文=伊藤みさき

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