コロナ入院患者の82%がビタミンD欠乏症、重症化要因の可能性

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者の82%がビタミンD欠乏症だった──スペインの研究チームは、このほど発表した論文でそう述べた。

2020年3月に新型コロナウイルス感染症で入院した患者216人を対象にビタミンDの量を検査したところ、10人中8人が臨床的に欠乏していると見られることがわかったのだ。

内分泌学と代謝学の学術誌「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月27日付けで掲載されたこの研究では、対照実験も行われている。先述した216人の新型コロナウイルス患者と同じ地域に住み、年齢と性別も似通っている197人のコントロールグループを対象にビタミンDの検査を実施したところ、ビタミンD欠乏症の割合は47%だった。

とはいえ、この結論は相関関係を示しているのであって、因果関係を示しているわけではないことを指摘しなければならない。つまり、ビタミンD欠乏症が新型コロナによる入院リスクを高めた直接の原因だと結論づけることはできないのだ。

ビタミンDは骨の健康を維持するのに欠かせない栄養素だが、免疫システムにも有益だとされており、ビタミンDが十分であれば、気道感染を予防できる可能性が実際に立証されている。それほど重要な栄養素であるにもかかわらず、ビタミンD欠乏症は決して珍しくない。

2011年に発表された研究によると、米国の成人のうち41.6%がビタミンD不足だと推定されている。この割合は人種によって大きく差があり、米国の黒人の場合は82.1%がビタミンD欠乏症だが、ラテン系米国人は69.2%だという。

ビタミンDは、日光に当たると体内で自然に生成される。また、脂肪分の多い魚や卵、強化牛乳、植物由来の代用乳などの食物にも含まれている。

このたび発表されたスペインの研究以外にも、ビタミンDが入院患者の有害転帰を予防できる可能性が示されている。9月に米ボストンの研究チームが発表した論文では、ビタミンDが十分に足りていれば、40歳以上の患者が感染症で死亡する確率が50%以上も下がることが明らかになった。

しかし、それよりあとに発表されたスペインの研究では、ビタミンD欠乏症と病気の重症度のあいだに何らかのつながりがあると結論づけることはできなかった。従って、新型コロナに対するビタミンDの効果についての知見はまだ決定的とは言えない。

世界の特定地域、とりわけ冬期の日照時間が限られているところでは、一般的には医師がビタミンDのサプリメントを摂取するよう勧めている。では、たとえ新型コロナに有効かどうかがまだ定かではなくとも、すべての人が今すぐビタミンDを摂り始めるべきかどうかと言えば、必ずしもそうではない。

ビタミンDを過剰摂取すると健康上のリスクが生じるほか、特定の薬剤と相互作用する可能性も忘れてはならない。従って、疑問がある場合はかかりつけ医に相談し、ビタミンDのサプリメントを摂取した方がいいのか、摂取しても安全かどうかを確認してほしい。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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