リモート時代の教育は「ぬまっち」に聞け。生徒が全集中する授業のつくり方

沼田晶弘


──「ダンシング掃除」や「U2」などはメディアでも取り上げられ、真似したい先生も多いはず。何より、子供たちが本当に楽しそうですよね。

それには面白い話があって、うちのクラスでは「U2(Under 2 minutes)」という計算練習をやっているんです。これは、縦と横それぞれに1から9までの数字をランダムに書いた81マスの表に、足し算や掛け算の答えを埋めていくというもの。2分をきれたら「U2」の称号が与えられ、1分をきれたら「神」と呼んでいます。

問題を解くときは、F1の曲を流すんですね。肌感覚として、爆音であるほど子供たちの集中力は高まります。毎回同じ曲だから、この音が流れたから今が何秒くらいっていうのがわかるんです。

これがゲームのように楽しいみたいで、宿題でもないのに、子供たちは家で何十枚も練習してきます。先日、保護者の方に、「子供に塾の宿題をしなさいと言ったら、『待って。その前にU2させて』と言われたので返答に困った」と言われました。勉強しなさいと言ったら、その前に勉強させてと言われたわけです。つまり、子供たちは自分が勉強していると思っていない。

だから、本来、U2で1分をきるのはすごく難しく、相当な練習が必要なんですが、うちのクラスには「神」がゴロゴロいるんですよ。4年生の掛け算最速は、32秒(取材時)。子供たちがU2を解いている様子を動画で見せたら、「これ1倍速ですか?」って驚かれます。ちなみに僕は1分きれません(笑)。

──音楽をかけると盛り上がるというのはおもしろいですね。

子供たちを動かすのに、音楽はもってこいなんですよ。

たとえば、小学1年生を担当していたとき、子供たちが体育着に着替えるのが遅かったので、星野源の『ドラえもん』を流すようにしました。「5分で着替えろ」と言っても、誰も時計を見ないからわからない。でも、「ドラえもんが終わるまでに着替えろ」と言ったら、みんなキャーキャー言いながら着替えるんです。

そしたら、その後保護者の方に感謝されました。寝起きでウダウダしている子供にドラえもんを聞かせたら、自分で着替え始めるって。習慣化しているわけです。

他にも、帰りの会の前には、Official髭男dismの『Pretender』を毎回流します。最近は、アレクサという有能な助手がいますから、僕が「アレクサ、Pretenderかけて!」と言ったら、子供たちは音楽が始まると同時に、明日のメモをとって、帰りの支度をします。曲が終わったら、帰りの会が始まるという流れです。

これもいつも同じ歌だから、「2番が始まったから、ここまで終わらせておかないとヤバイな」ってわかるんですよ。大人だって、朝の支度をしているときに天気予報や占いが始まったら「そろそろ出なきゃ」って思いますよね。それと同じです。

──本当に独創的なアイデアですよね。授業もユニークなものばかりですが、そういうアイデアはどのようにして生まれるのでしょうか。

授業は、「学習指導要領」というものに沿って行われるんです。教科書は、その学習指導要領に沿ってつくられている。だから、学習指導要領さえカバーできていれば、必ずしも教科書どおりに授業を進めなくていいわけです。

たとえば、「新聞を書こう」という授業があります。でも、急に新聞を書けと言っても、子供たちは書けない。子供たちがすすんで書くのは、よっぽど伝えたいことがあるときか、もしくはお小遣いをもらえるときですよ。よっぽど伝えたい出来事は、毎日は起こりません。
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文=伊藤みさき

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